突然の雨。部活は中止だな、と思いながら、窓の外を眺めていると、テニスコートの奥に見えた人影に視線が止まった。その影は、宙を仰ぎながら、全身で雨を受けていた。

「こんなところで何をしている、不二」
 宙を仰いでいるその視線を遮るように、傘を差し出す。
「……手塚?」
 ゆっくりと視線を下げた不二は、オレと眼を合わせるとニッと微笑った。
「手塚っ」
 その声と共に、不二は両手を広げると、オレに抱きついてきた。その手が触れる前に、不二の額を押しやる。腕いっぱいに不二を遠ざけたため、せっかく傘の下に入れた不二の身体は再び雨に打たれてしまうことになった。
「何で拒むの?僕を傘に入れてはくれないの?」
「オレが濡れる。そんなに濡れたいなら、独りで濡れてろ」
 頬を膨らせる不二に、オレは呟くと踵を返した。慌てて、不二がオレの前にまわり、進行方向を塞ぐ。
「ゴメン。もうくっつかないから」
 ねっ、と目の前で両手を合わせる。
 オレは溜息を吐くと、不二に傘を差し出した。不二は傘に入ると、抱きつくかわりに傘を持つオレの手に自分のそれを重ねてきた。その手の冷たさに、オレは思わず不二を見た。
「部室にさ、荷物置いてあるんだ。いい?」
 苦笑しながら言う不二に、オレは頷くかわりにその手を引くようにして部室に向かって歩き出した。

 濡れた制服のままで帰るという不二に、オレはジャージに着替えるように言った。最初は嫌がっていたが、風邪をこじらせたら困る、と言うと、不二は大人しく従った。
「ちゃんと拭け」
 軽く搾ったシャツで体を拭く不二に、オレはバッグから今日の部活で使う予定だったタオルを出すと、不二の頭に乗せた。いいよ、と呟く不二をそのままに、その頭をがしがしと拭く。
「体は自分でやれ」
「えーっ、拭いてくれないのぉ?」
「髪。ボサボサだぞ」
 言い放ち、背を向けるようにしてベンチに座る。ケチ、という不二の呟きに聞こえないフリで、窓の外、まだ降り続いている雨を眺める。
 暫くそうしていると、突然、両脇から白い腕が伸びてきた。
「ねぇ。僕、体冷えちゃった」
 甘えるような声と共に、後ろから抱き締められる。
「手塚、温かい」
「お前が冷たいだけだろう。ったく」
「……て、づか?」
 オレが拒むと思っていたのだろう。回された腕に自分の手を重ねたオレに、不二は驚いたようだった。珍しいその反応に、思わず笑みが零れる。
「何故あんなことをしていたんだ?」
「んー…」
 頬を寄せクスリと微笑うと、不二はオレの手から逃れ、シャツのボタンが外してきた。直に、オレの肌に触れる。
「いつもは僕が君を温めてるからさ。ああすれば、今度は君が僕を温めてくれると思って」
 自信を持った言い方に、オレは溜息を吐いた。不二の手を解き、向かい合う。
「オレが気づかないで帰っていたら、どうするつもりだったんだ?」
「どうもしないよ。そのときは、風邪を引くだけだ。でも、君は僕を見つけてくれたし、絶対に見つけてくれるって信じてたから」
 オレの膝に乗るようにして座ると、不二は額を合わせてきた。見つめ合い、微笑う。
「オレが見つけても、風邪を引くかもしれないぞ」
「だから、これから温まるんじゃない。大丈夫。この雨の音で、外に漏れた声は掻き消されるよ」
 馬鹿、と呟くオレにクスリと微笑うと、不二は冷たい唇をオレのそれに押し当てた。





雨に関する話は不二塚でもそれ以外でも結構書いているので。
まぁ、語らずに甘いだけにしようかな、と。
不二は部室のドアくらいピッキングで簡単に開けますよ。
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