一つとして同じモノがない。だからきっと魅かれるんだ。

 不二は天(そら)の写真を撮ることが多い。それは昼も夜も早朝すらも関係ない。勿論それだけではなく、植物や動物も撮っている。撮らないのは人間くらいか。オレは例外らしいが。
 けれどやはり一番多いのは天の写真だろう。不二自身が天に憧れているのは分かるが、同じ景色をいくつも撮って、何が楽しいんだか。オレにはさっぱり理解からない。
「――理解からないの?」
 不二にその事を訊いたら、その言葉と共に不思議そうな表情が返ってきた。
「手塚なら、きっと理解ってくれてると思ったんだけど」
「悪かったな、期待に添えなくて」
「そんな新たな一面発見っと」
 むくれたオレに不二は微笑うと、カメラを向けた。オレが反応するよりも早く、シャッターを切られる。
「人は撮らないんじゃなかったのか?」
 不二からカメラを取り上げ、睨みつける。けれど、不二は気にしない様子で微笑った。
「いいの。言ってるでしょう?君は例外なんだって。君も一つとして同じ瞬間なんてないんだから」
「……も?」
「そう。僕が好きなあの天も、一つとして同じ瞬間がない。同じ場所から見上げても時間帯や日によって色が違うし、だからきっと魅かれるんだ」
 同じなんて平和、つまらないだけじゃない。呟いて天にカメラを向けると、一度だけシャッターを切った。
 それが最後の一枚だったらしい。不二はポケットにカメラをしまうと腕に絡み付いてきた。オレを見上げ、だらしのない笑みを見せる。
「ったく。……だがそれは、他の人間にも言えることなんじゃないか?」
「ん?」
「誰だって、いや、全てのものは一つとして同じ瞬間はない。違うか?」
「そうだね」
 反論してくるかと身構えたが、以外にあっさりと不二は頷いた。すこし、拍子抜けな感じだ。
「……でもね」
 まぬけな顔をしていたのかもしれない。不二はオレの顔を除き込むとクスリと微笑って言った。
「僕にとっては、手塚以外の人間は全部同じに見えるんだ。不思議だよね。手塚を好きになるまではこんなことなかったのに。これが『愛してる』ってことなのかな?」
「……っ」
 アイシテル、の言葉に、オレの顔は一瞬にして熱を持ってしまった。不二の視線から逃れるために、顔半分を覆うようにして眼鏡を直す。
「ね。そう思わない?」
「!」
 オレが赤面していることはお見通しだとでも言うように、不二は顔を隠していたオレの手を掴んだ。オレの顔を覗き込み、ね、と呟く。
「恥ずかしい奴だな。そういうことは思っても言葉に出すな」
 少し早口で言うと、オレは不二に掴まれていない左手で眼鏡を直した。
「だったら、行動で出せば良いってこと?」
「?」
 不二の言葉を理解する間もなく、左手も掴まれた。唇が触れる。
「ねっ」
「……行動でも、だ。馬鹿」
 満足そうに微笑っている不二の額を小突くと、痛いなぁ、と額を抑えている手に、キスをした。





『愛してる』って、余り書かなくなったなぁ、と改めて思いました。
中学生ですからね。どちらかというと『好き』っていう言葉のほうが似合うと思います。
ふざけて言う『愛してる』は違和感ないけど、面と向かって真面目に言うのは違和感あるよね。
……考えてみると、うちの不二クンはどのCPを通してもニンゲンの写真は滅多に撮らないなぁ。取ったとしてもその時の相手くらいか。
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