「君と僕は、まるで鏡のようだ」
 オレをベッドに押し付けながら真っ直ぐに眼を見つめると、不二は呟いた。その蒼い眼を細め、キスをする。
「……鏡?」
「そう、鏡」
 君と僕は、まるで正反対だからね。手塚がもし天使なら、僕は救いようのない悪魔だよ。耳元で囁き、そこを舐める。湿った感覚に、オレは思わず身を震わせた。それに構わず、不二の舌が、耳から首へと下がってくる。いつシャツのボタンを外したのか、不二はそのままオレの鎖骨に舌を這わせ、そしてきつく吸い上げた。
「……っ」
「色、白いよね。本当に天使みたいだ」
 紅い痕を付けたのだろう。不二はそこを撫でるようにして触れながら言った。
 色白、か。確かに、テニスプレーヤーにしては肌が白いが、そういう不二の方がもっと白い。そして、柔らかい笑顔。オレには、よほど不二の方が天使に見える。
「それはないよ。知ってるでしょう。僕がどれほど穢れてるかって」
 オレの考えを読んだのか、不二は少し切なげな笑みを見せると、露になったオレの胸に口付けた。そのまま、体重をかけるようにしてオレを強く抱きしめる。
「出来ることなら、君のその翼を折って僕だけのものにしたいけど」
 でも、それは出来ないから。やっぱり僕たちは一緒にいるべきじゃないんだろうね。
 少しくぐもった声で言うと、不二は少しだけ手を緩めて胸に耳を当てた。オレの呼吸に、自分のそれを合わせる。
 全く、世話の焼ける奴だ。さらさらと不二の髪を梳きながら、オレは内心溜息を吐いた。ここまで好き勝手やっておいて、今更一緒にいるべきではないなどと。それこそ、オレは、オレが本当に天使だとしたら、翼を失ってしまう。不二がいるからこそ、きっとオレは飛べているのだろうから。
「不二、オレは…」
「ねぇ、手塚。君も、そう思うでしょ?」
 オレの言葉を遮るようにして言うと、不二は身体を離した。真っ直ぐにオレを見つめてくる。その切なげな眼よりも、オレは消えてしまった体温の方が気になって。腕を伸ばし不二の首に絡めると、自分からキスをした。
「……何がだ?」
「だから、僕たちは鏡のような存在だって」
 唇を離し訊くオレに、不二は口元だけを歪ませて微笑った。もう一度、今度は不二の方からキスをする。
「……そうだな」
 不二が望んでいるのはそれを否定する言葉だと理解っているから。オレは不二を見つめると、素直に頷いた。
「手塚?」
 案の定、不二が不思議そうな顔をする。否定して欲しいのなら、そんなことを訊かなければいいと思う。それに、どうせオレが否定をしたところで、それを聞き入れてはくれない。つくづく、勝手な男だ。だが、不二がこんな勝手なことが出来るのはオレだけだということも理解っている。それが嬉しいから。オレは溜息を吐くと、首を横に振った。
「だが、お前の言う『鏡』と、オレの言う『鏡』では性質が違う。オレは、鏡は結局は同じものだと思っている」
「………どういうこと?」
「確かに、鏡は左右反対に映し出すが。元になるものと映っているものは、同一のものだ。だから、不二がオレたちを鏡のような存在のように見えるのなら。それはきっと…」
 言葉を止めると、手を滑らせ不二の頬を両手で包んだ。きっと?と訊き返してくる不二に、深呼吸をするとオレは微笑った。
「きっと。オレたちが同じ想いを抱いているからなのだろう」
「手塚。それって――」
「鏡なら、言わなくても理解るだろう?」
「………うん」





わーい、バカップル。
何か、久しぶりに天使と悪魔な話を書いた気がします。
不二は自分と手塚との格差みたいなものにこだわるのですが、
手塚は全く気にしてません。というか、そんなものを感じてません。
ので、そう言った話をするときのみ、手塚は強気です(笑)
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