何と言う(はるみち)
 どういうわけか、君に会いたくなった。

 僕は今走っている。風になりたいなんて夢物語は追い抜いて。風よりも速く、彼女の元へとただひたすらに。
 どうして走っているのか。自分を追い抜いていく車のテールランプを眺めながら思う。車やバイクの方が速いのは明らかだし、普段彼女の部屋に行くときはそうしているのに。
 走りながら考えたのは、わざわざ走ってきたのだから会ってはいさよならじゃなく、少しくらいは足を休めるために留まることが出来るんざゃないかということ。しかしこれは後付けの理由であり、走り出したときには僕はそんなことを考えてはいなかった。
 会いたい。ただ、会いたい。その気持ちだけが僕を走らせている。p  それにしたって。会って僕はどうするつもりなのだろうか。熱い抱擁をしてその後は情熱のままになだれこむ?まさかそんな。考えた今はそれもいいと思うけど。
「……会いたかった」
 そう、まず、それだけだ。彼女に会ったら会いたかったと言おう。会えて嬉しいとも。それだけできっと充分だろう。その後こんな時間だからと僕を追い返すのか留め置くのかは彼女次第でいい。僕は兎に角彼女に、みちるに会えればいい。
 歩行者用の信号の点滅に、僕は更に速度を上げる。彼女の住むマンションまで、あと1キロ。


ないしょのはなし(はるみち&ほたる)
「身長伸びないかなぁ」
「どうしたんだい、急に。僕は今のサイズが好きだけど」
「だって。みちるママがしてるみたいに、ほたるもはるかパパとナイショ話したいもん」
「なんだ、そんなこと。……ほら。こうして僕が屈めば」
「はるかパーパっ」
「わっ。おい、ほたる。抱きつっ……」
「あはは。駄目だよ、はるかパパ。しっかり支えないと」
「まさか抱きついてくるなんてさ。倒れた先がソファで助かったよ。ほたる。起きあがるから、手、離してくれないかな」
「だーめ。だってほたるまだ、ナイショの話してないよ?」
「あー……そっか。そうだったな。で、なんだい?内緒の話って」
「あのね……」
「はるか、ちょっと今――」
「あ」
「……はるかさん?」
「い、いや、これは違うんだ。誤解だよ」
「あら。何が誤解なのかしら?」
「だから君が思ってるような経緯を辿ったんじゃないってことだよ」
「じゃあほたるから誘ったということね」
「うん」
「ほたる、何言って。……えーっと。だからね、みちる」
「ほたるね、はるかパパとナイショの話をしてるの」
「そうそう。それでちょっと」
「耳だけじゃなく体まで貸したって言うわけね」
「みちるっ。だからこれはたまたま。ほたるが抱きついてきたからバランス崩しちゃって」
「その割にはさっき故意に顔を近づけていたようだけど?私が部屋に入ってこなかったらその唇は何処に落ち着いていたのかしらね」
「ナイショ」
「の、話をほたるがこの状態のままするって言うからさ。今度こそ耳を貸そうかなって」
「……貴女がこの家の誰とどうなるかは自由だわ。結局私たちが家族であることに変わりはないのだし」
「みちる。そりゃないだろ?」
「そうかしら?」
「僕はさ」
「ねぇ、はるかパパ。――。ねっ」
「……ほたる。それは今この状況では、キツいよ……。」


Naked(はるみち)
「貴女って、体が丈夫なのか何なのか分からないわね」
「免疫力ってどうしたら鍛えられるのかな?」
「食事かしら。でもそれよりはるかの場合は……体温計、いいかしら?」
「ああ」
「……やっぱり」
「熱、どれくらい?」
「39度3分。それもだけど、服」
「あ」
「風邪をひいたときくらい何か着てもらえないかしら?」
「鬱陶しくってさ」
「そんなだから風邪をひくのよ。昨日だって寒かったのに」
「君が温めにくると思ってたからさ」
「……バカ」
「そう。待ちぼうけを食らった結果がこれだ。ホント馬鹿だよ、僕は」
「それって私が悪いってこと?」
「そんなことは言ってないさ」
「……ねぇ。お願いだから何か着て?」
「ほたるは勝手に部屋に入ってこないよ。それに今は学校だ」
「そうじゃなくて。目の、やり場に困るわ」
「見慣れてるだろ?それに今は顔以外毛布に隠れてるぜ?」
「そう、なのだけれど」
「分かってると想像する?」
「…………」
「なぁみち――」
「何か、温かい飲み物でも持ってくるわ。それから水と薬も。それを飲んではるかは寝るのよ」
「君と?」
「はるかっ!」
「冗談だよ。君に風邪をうつすわけにはいかないからな」
「もう」
「……みちる」
「なあに?」
「すまない」
「……そう思うなら、私が戻ってくるまでに、何か着ていて?」
「ちぇ」
「ご不満?」
「いえいえ。冗談ですよ、みちるさん」


文明の利器(はるか&せつな)
「せつな、悪いけど電話取ってくれる?」
「いいですけど……どこへ?」
「これこれ。羽毛布団。最高級品らしいぜ。って。あれ?せつな、電話」
「いけません」
「なんでだよ。ちゃんと4人分買うし僕が支払うからさ」
「それでも駄目です。あなたは文明の利器に頼ってばかりいるから免疫力が衰えて風邪をひくんです」
「文明の利器っていうほどのものか?」
「とにかく、駄目です。眠るときに寒いなら湯たんぽがあるんですから、それを使ってください。暖房も駄目です」
「……節約ママかよ」
「何か言いました?」
「これじゃあ僕だけじゃなくみちるやほたるまで風邪ひいちゃうだろうなあ。ああ、そうだ!どうせならみんなで身を寄せあって眠ろうか。確かペンギンはそうやって寒さを防いでいるとか言うじゃないか!それがいい。そうしよう。それなら文明の利器ってやつに頼らないわけだからせつなも文句は言わないだろうし。な?」
「……い」
「い?」
「いけませんっ。だいたい1つのベッドを4人で使えるわけがないでしょう?」
「……分かったよ。じゃあ、そうだな。2人なら何とか寝れるから、今夜から2人で寝ようかな」
「もっといけません!ほたるの教育に悪――」
「なに想像してんだよ。みちるとじゃなく、ほたるとだよ。ほら、子供って体温高いだろ?」
「なんだ、ほたるとですか。それなら……って。駄目です!はるかっ。その後のみちるのフォローは……」
「しょうがないだろ。僕は寒がりで、君は最高級の羽毛布団もみちるの肌も駄目だって言うんだから。消去法だよ。ま、そういうわけだから、何かあったときはフォロー頼んだぜ」
「嫌ですよ、はるか。はるかっ!」


on the TRAIN(はるみち)
「君、人混みが苦手だって言ってなかったか?」
「ええ」
「だったら。何で電車なんか。僕の運転は、そんなに心許ないかな?」
「そんなことないわ。私、はるかの助手席好きよ」
「だったらさ」
「たまにはいいじゃない」
「たまにはって……。今月入ってから何回目だと思ってるんだ?しかも……っ。こんなラッシュ時に限って。電車に乗るだけなら、もっと空いてる時間帯があるだろ?」
「それは、そうだけど」
「こうやって。君を守る僕の身にもなってくれないかな?」
「あら。ご不満?」
「そうじゃない、けど……。僕は君のナイトより王子様になりたいんだよ」
「はるかのいう王子様は、お姫様を守ってはくれないのかしら?」
「……守るさ」
「だったら貴女は立派な王子様よ」
「……まぁ、いいけど」
「っ」
「と。大丈夫か?」
「ええ」
「ったく。だからラッシュはきら――」
「好きよ」
「え?」
「だから好きなのよ。電車」
「……ったく。そんなの、電車じゃなくったっていつでも……。まぁ、いいか」


1000題127.プライバシー(外部ファミリー)のその後。
「せつなさん。ちょっといいかしら」
「な、んです?みちる。そんな顔して」
「そんな顔?どんな顔かしら」
「……それは……。ええと。用件は、なんです?」
「この家のセキュリティについて。検討し直した方がいいんじゃないかと思って」
「……まさか」
「まさか?何か心当たりでもあって?」
「い、いえ。そういうわけでは」
「せつなさん?」
「ええと。あ。ほたる。ほたるはどこに……?」
「ほたるなら、私のはるかと一緒にドライブよ」
「…………」


クリスマスネタ。(はるかとせつな)
「せつな、メリークリスマス。はい、これ」
「美白ケアセット?……なんですか、これは」
「クリスマスプレゼント。もうガングロなんて死語だぜ、せつな。これからは美白の時代だよ」
「って、はるか!言っときますけど私の肌は元々――」
「♪〜」←聞いちゃいねー。


クリスマスネタ2(外部ファミリー)
「ほたる。枕元に靴下用意した?」
「したー。でも、ほたるちょっと心配かも」
「何が心配なんだい?」
「あのね、せつなママにおっきい靴下もらったんだけど。でも、それでもプレゼント入らないと思うの」
「……ほたるは、そんな大きいものをお願いしたの?」
「うん」
「えーっと。ちなみにそれは、何を?」
「おしえなーい」
「なんだよ。いいじゃないか、教えてくれたって」
「だーめ。はるかパパにはゼッタイ教えないの!ほたるもう寝るから。おやすみ、パパ」
「あ、ああ。おやすみ」

「ほたるは眠ったの?」 「ああ。なぁ、みちる。ほたるが欲しがってるものって、これじゃなかったのか?僕、今日朝一で並んで買ってきたんだぜ?」
「確かにそれはほたるの欲しいものよ。でも、一番じゃないわ」
「なんだよそれ。まるで君は知ってるみたいじゃないか」
「ええ。知ってるわ。せつなに教えてもらったもの」
「なんだよそれ。じゃあ知らないのは僕だけってこと?」
「そうなるわね」
「で。ほたるは何が欲しいって?」
「どうしてそんなこと気にするの?」
「だってどうせなら、一番欲しいものをあげたいじゃないか」
「でもほたるはそれが無理だって分かっているから。だからせつなに駄目だった時のために二番目に欲しいものも伝えたのよ」
「で、その二番目だけが僕に伝わってきた、と」
「不満そうね」
「当たり前だろ」
「でもだって。じゃあ教えたら、はるかはそれをほたるにプレゼントするっていうの?」
「なんだよ。しないつもりなのか?意地悪だな」
「意地悪。そうね、意地悪かもしれないわね」
「どうしても、無理なものなのか?」
「どうしてもっていうわけじゃないわ」
「だったら多少の無理くらいきいてやろうぜ。もしかしたら、これが僕たちが家族として過ごす最初で最後のクリスマスになるかもしれないんだし」
「でも」
「だからさ。とりあえず、ほたるが何を欲しがってるのか教えてくれよ。みちるたちだけで勝手に判断下したって、もしかしたら僕だったら手に入れられるかも知れないだろ?」
「そうね。はるかなら、可能かもしれないわ」
「だったら」
「でも、それじゃあ私が嫌なの」
「なんなんだよ。だから」
「だからね。ほたるが欲しがっているのは貴女なの」
「――え?」
「天王はるかなのよ」
「え、と。それは。……だから、入らないとかそんなこと」
「さて。私はほたるが一番欲しがっているものを教えたわ。判断を下すのははるかよ。どうする?」
「……みちるが、欲しいものは?」
「え?」
「君が欲しいものは、何?」
「私は今、貴女を手にしているから。欲しいものは何もないわ。……ただ」
「ただ?」
「貴女が他の誰かのものになるというのなら、欲しいものは出来るけれど」
「……そっか。じゃあ僕は、一度ほたるのものにでもなろうかな」
「えっ?」
「じゃないと、君の誕生日に何もあげられないだろ?」
「…………」
「なんて。冗談だよ」
「はるかっ」
「ほたるには、これで許してもらおう。じゃないと、僕の苦労まで無駄になる」
「もう」


クリスマスネタのその後(外部ファミリー)
寝ようとしたはるかの頭を誰かが背後からガツン。
不意をつかれて気を失ったはるかを特大の靴下に入れて、ほたるの部屋へ(上部はリボンでがっつり縛ってますよ)。
目覚めたほたるは靴下を開けたらはるかが入っててビックリ!
嬉しくて抱きつくけど、目覚めたはるかは「これは何かの手違いだから返品してくるよ」と部屋を出る。
が。
それをみちるに目撃されてしまい……。

「あら、はるか。ほたるの部屋に何か用かしら?」
「え?あ。いや。そろそろ起こさないとなって」
「ほたるを起こすのに何時間も必要だったの?」
「え?」
「昨日、何度も部屋に行ったのに」
「あ。えーっと。それは。なんていうか。……ごめん」
「で。はるかはほたるの部屋で一晩、何をしていたのかしら?」
「そんな、みちるが勘繰るようなことはないよ」←気絶してたなんてかっこ悪くて言えない
「勘繰る?私が何を勘繰るって言うのかしら」
「えーっと、だから、その」

なんてやりとりを、影から覗き見てほくそ笑むせつな。←犯人(クリスマスネタ1の仕返し)。


『after talk』のアフタートーク
「みてみて!サンタさんからプレゼントもらったよ!って。あれ?はるかパパ?みちるママ?……せつなママまで」
「ほたるちゃん、どうしたの?」
「なんか、みんな寝てる」
「いいなぁ。そうだ。あたしもプーと一緒に寝ちゃおうっと!」
「ちびうさちゃん」
「ほたるちゃんも一緒に寝ようよ」
「えっ……」
「ほらほら。ねっ!」
「うんっ」

(一時間後)

「え。な、なんですか、これは」←せつな起きてみた。

多分、はるかとみちるとせつなは風邪を引きます。
「若くないのね、私たち」←みちる
「なんか年寄りくさいな、それ」←はるか
「……(お二人と一緒だったなんて、なんて倖せなんでしょう)……」←せつな
※二人=ちびうさとほたる。
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