Jealousy...? |
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「みちるぅ」 まるで子供みたい。彼女は甘えた声を出すとベランダに佇む私の背後から腕を伸ばしてきた。 「……怒ってる?」 強く抱きしめ、耳元で云う。それは囁きのような情を煽るものではなく、子供が母親に伺いをたてるような口調だったから。思わず笑みがこぼれそうになって。 「勿論、怒ってるわ」 緩んだ口元を悟られないよう、なんとか声色を作る。 すると、私を包む腕に力を込めた彼女は今度こそ、囁いた。 「すまない。今日のは冗談が過ぎた。……みちる。愛してる」 ズルい。 体中に響き渡る低い声に思う。 アイシテルなんて言い逃れの常套手段だと分かっているのに逆らえない。もう幾度となく聴いているはずなのに、効力は衰えるどころか増すばかりだなんて。 「本当。ズルい人ね、貴女って」 「……え?」 呟きに彼女は声を上げたけれど。私はそれに気づかない振りをして回された腕に手を添えた。撫でるようにして触れ、ゆっくりと束縛を解く。 「ねぇ、はるか。幾ら私がどんなはるかでも好きになってしまう盲目の人でも、嫌いな貴女の姿だって一つくらいはあってよ?」 私以外の人と楽しそうに触れ合うだなんて。そんな貴女は嫌いだわ。放っておけないのは、優しさだって分かるけど。私に見せる優しと同種のものを他の誰かに与えるなんて嫌。 優しくしてもいいの。口説いていても構わない。それが貴女の性格だって思うから。 でも、だけど。 「こんな甘えた姿は、君にしか見せてないよ。いや、みちるがいるからこそ、僕は甘えられるんだ」 再び私を抱きしめては猫のように頬摺りをして、耳朶にかじりついてくる。甘く優しい感触に吐息を漏らすと、彼女の手が緩んだ。 私の肩を掴み、反転させる。 「怒った君も、素敵だよ。……みちるにヤキモチを妬いてもらえるだなんて、僕は世界一の倖せものだ」 眩しそうに目を細め、口元を歪ませる。それがいつもの余裕のある笑みで、思わず見惚れてしまったことが少し癪だったから。私は薄く笑うと近づいてきた彼女の唇にお預けの人差し指をあてた。 「それは違うわ、はるか」 「みちる?」 訝る彼女に、至上の笑みを見せる。 「天王はるかに愛情を試される。私こそが宇宙一の倖せ者よ」 他の誰かを見つめていたその何倍も、私に見惚れればいいと思いながら。 |
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