冷めた視線のその奥に
 オレはマゾなのかって時々思う。
「いいぜ。来いよ」
 どうしても急いてしまう俺に冷めた声で促す天王の、蔑むようなその目に。まだ入れてもいないのにいきそうになることがたまにある。……よくある。いや、いつもだ。
 だけど何もせずに出しちまうのも癪だから、感情を必死で抑えてその中に入り込む。
 天王が表情を変えたことに、少しだけ得意気になるけど。
「ニヤついてないで動けよ」
 冷ややかな声と視線を浴びせられ、俺は少しむくれながらも行動を開始する。  そのことになのか、むくれた俺の子供じみたところになのか、天王は息を切らせながらも薄く笑う。細めた目にはまた、僅かに侮蔑の色。
 だから、どうして俺は……。そんな視線にいちいち感じてしまうんだ?
 馬鹿じゃねぇのかって、自分でも思うけど。体の反応は正直だ。
 でも。
 息詰めるような喘ぎを聞きながら、不意に思う。
 もしかしたら、その目だけでいって見せたら。今以上の冷たい目を俺にくれるんじゃないかって。
 馬鹿げたことだ。そんなことになったら、いよいよコイツを抱けなくなる。
 って。なに考えてるんだ、俺は。
「星野。集中しろよ」
「お前にだけは言われたくねぇよ。他の事ばっか考えてるくせに」
「だから。それに集中しろって言ってるんだ」
「……何?」
「僕のことを考えるな」
「誰がお前のことなんか考えるかよ!」
 思わずムキになる。それが肯定だって言ってるようなもんなのに。自分でも馬鹿だと思う。多分、コイツもそう思ってる。
「……だったらいいさ」
 だから。口ではそんなことを言いながらも、俺を見つめるその目は。いつまでも冷たい……。


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