カタチ
 会ってからずっと、彼女の口元を眺めている。
 それは珍しいことじゃない。
 彼女の唇はいつも魅惑的だ。
 けれど今日の視線はそれより少し先。
「妬けるわね」
 そのことにどうやら彼女も気づいたようだ。
 視線の中心になろうと首を斜め前に傾げる。
「君がつくり出してるものじゃないか」
「貴女にだってつくりだせてよ?」
 ほら、と。僕の吐息でつくられた白色を指さす。同じもの、有り触れたものだとでも言うように。
 けれどそれは決して同じなんかじゃない。
「……言葉のかたちを見てたんだ」
「はるか?」
「そう。そうやって君の呼ぶ、僕の名前のかたちを」
 ねぇ、みちる。
 わざと過剰に息を吐きながら呼びかける。
 舞い上がる白色は、自分がつくり出したとは思えないほど柔らかだ。
「何も文字だけがかたちじゃないんだな。ほら、見てみろよ。君に語りかける僕の言葉はこんなにも優しい色かたちをしてる」
「……そうね。じゃあ私の呼ぶ貴女の名前はどんなかたちだったのかしら?」
「さぁ?忘れちゃったな。だからもう一度呼んでくれないか?出来れば、愛の言葉を添えて」


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送