little sky
 傘をさそうとした手を、はるかに止められた。
 どうして、と目で問いかけると、はるかはただ微笑んで自分の持っていた大きめの傘を広げた。
 腕を引かれ、ぶつかるようにはるかの傘に入り込む。突然の出来事に、もう、と呟きながらはるかを見上げると、その向こうには青空が広がっていた。
「あ」
「こう雨の日ばかり続いたんじゃ、青空が恋しいかなと思ってね」
 星空はプラネタリウムにでも行けば見れるけどさ。はるかはしたり顔で微笑うと、私の肩を抱き寄せて雨の中へと足を踏み出した。待って。呟いて、強引に立ち止まる。
「どうかした?」
「空を、見せてくれたのは嬉しいけれど。でも、はるかの肩が濡れてしまうわ。傘なら」
 私も持っているから。そう続けようとしたのに、出来なかった。
 短く低く持ち直された傘。頭がぶつかりそうになるほどに近づいた青空の下、私の口は、はるかに塞がれていた。
「同じ傘に入ってるほうが、何かと便利だろ? それに。互いの傘の半径分だけ離れていなくちゃならいし」
 肩を掴む手に力を入れ、はるかが再び歩き出す。私はもう、抵抗はしなかった。空が、少しだけ遠くなる。
「これなら雨の日も好きになれそうかな」
 チープな空を見つめ続ける私の視線を遮るように顔を覗かせると、はるかは同意を求めるように、微笑った。


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