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 突風が吹く。小さく声を上げて暴れる髪を耳にかける彼女に見惚れていると、目が合った。耳元で髪を押さえていた手が、僕の頭に触れる。
「みちる?」
 訝る僕に彼女はふわりと微笑うと、手のひらを広げて見せた。また突風が吹き、薄紅の小さな花びらがあっという間に彼女の手の中から消える。
「これじゃあ、意味が無いわね」
 また僕の髪に花びらがついてしまったのだろう。彼女は僕の頭を見た後で、口元に手を当てて笑った。
「だったら放っておけばいいさ。このまま花びらをつけて帰って、ほたるたちのお土産にしてやろうぜ」
「そんなこと言って。二人きりで桜を見たことがバレたら、ほたる、きっと拗ねてしまうわ」
「大丈夫だろ。明後日家族で来るんだから」
 満開の桜。明日も穏やかな天気だというし、明後日まではもつだろう。そんなことを考えながら目の前の桜を見上げていると、溜息が聞こえた。
「そういう問題じゃないのよ」
「え?」
「はるかさん。あなたはもう少し、女心というものを学んだ方がいいわ」
「……女心、ね」
 一応僕も、女なんだけどな。みちるの言葉に多少のひっかかりは覚えたものの、それでも僕が鈍感であることは自他共に認めるところだから。
「精進するよ」
 苦笑しながらも、僕は頷いた。


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