1 貪欲なキス(はるみち)
「ん」
 口の端から、吐息が漏れる。スキンシップにしては過剰な口付け。後頭部に差し込まれた手がくしゃりと髪を掻き乱す。
「みちる。それ以上、すると。歯止めがきかなくなるぜ?」
「あら。今だったらまだ止められるの?」
 勝ち誇った笑みを見せ、するりと膝に跨ってくる。
「先に誘ったのはあなたよ、はるか」
「誘ったって。僕は」
 ただ唇に触れただけだ。髪を撫でたり、手を触れたりするのと同じ感覚で。それ以上のことを、見越してしたわけじゃない。
 いつだってそうだ。みちるは滅多に自分からキスをしてこないかわりに、偶のキスは時と場所を選ばず深く情を煽り立てる。
「夜までには、まだ随分と時間があるようだけど」
「おやつには丁度いい時間だわ」
 ゆっくりと細くなる目。伸ばされた細い指が僕の頬に触れる。抗う時間をわざと作って、それが出来ない僕を楽しんでいるかのような。
「はるか」
「……降参だ」
 溜息混じりに呟くのを合図にしたかのように、みちるの顔が近づき、また唇が触れる。
 歯止めがきかなくなる、と言ったのは決して大袈裟な表現じゃなく。深く舌を絡めてくるみちるに応えながら、僕の手は薄いブラウスのボタンへと迷うことなく向かっていた。


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