5 甘い悲鳴(外部ファミリー)
 ああ、またやっている。
 リビングの薄いドアから漏れてくる声に、頭を抱えたくなる。
 曇りガラスの向こうで行われているのは、ただのマッサージだと分かっているのに、聞こえる声はどうしても嬌声だとしか思えない。
 低く響くはるかの声。それに応えるようにあがる、みちるの甘い悲鳴。長く聞いていると妙な気持ちになってくる。頭の中に、絡み合う二人のイメージが浮かんで。
 けれど、これはただのマッサージ。そう、ただのマッサージ。
 だから部屋でやれと言えないし、私がここでリビングに入るのを躊躇う理由にもならない。
 深呼吸をして、ドアノブに手を掛ける。手首を捻る瞬間、必ず過ぎるのは、これがもしマッサージではなかったのだとしたら、という不安。
 いや、それを見られたところで私が罪悪感を抱く理由はないし、困るのは二人なのだと分かってはいるのだけれど。
 もう一度、大きく息を吸い込む。思い切ってドアを開けると、気づいた二人が同時に視線を向けた。
 吐き出す息は途中から、安堵の溜息に変わっていた。


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