7 耳を塞いでも消えない音(はるみち)
 目を閉じて耳を塞げば、自分の鼓動が頭に五月蠅く響いてくる。それが嫌で手を離すと、今度ははるかの指先によって奏でられる水音が耳を侵す。
 どちらにしても結局、自分の音を聞かなくてはならないのね。聴きたいのは、もっと違うものなのに……。
「はるか」
 名前を呼んで、シーツを掴んでいた両手を伸ばす。はるかは優しく微笑むと、薄く開けた唇を押し当ててきた。割り込んでくる舌。
 時折漏れる、どちらのものともしれない吐息。それに名札をつけるために、肘を折り、背中に爪を立てた。
「っあ」
 皮を抉る感触と共に、はるかが口の端から短い声を上げる。そのことに満足していると、仕返しのつもりなのか、ナカに沈めた指を激しく出し入れされた。私の口から、耳を塞ぎたくなるような鼻にかかる声が、意思とは関係なくこぼれていく。
 耳は塞げない。けれども自分の声も聴きたくない。だから私はまた、口づけを交わす。
 そうして残されたのは上と下で鳴る、粘りを持った水音。
 その響きがもたらす自分の乱りがわしさに耐えきれず自分の耳を塞いでみたけれど、もはや手遅れで。私の体を伝わる振動は頭の中で、鼓動すらかき消すほどの淫靡な音を響かせ続けていた。


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