監視されている、と制ししたにも関わらず、奴は、知っている、と囁き笑うと唇を重ねてきた。
頬に触れていた手が首筋へと伸び、そのもどかしい感触に声を漏らしてしまいそうになる。
「別に構わないよ。黄泉はもう、オレたちのことは調査済みだから。寧ろ見せ付けてやればいい」
ヨミ。
魔界の三大勢力の一人。コイツの、蔵馬の本来の姿を知る男。そして、今は。
「分かっていて放っておくのか」
「放っておけないから、監視なんてつけてるんでしょう」
「そうするくらいなら、繋ぎとめておけばいいものを」
言いながら、俺は顔を歪めた。それに気づいた蔵馬も同じように顔を歪めたが、次の瞬間には俺の目に広がりすぎて表情は見えなくなっていた。
こうすることで繋ぎとめておけるのならば。
舌を絡めながら何度も思う。
だが、コイツを引き止めて置けないことくらい知っている。
だからせめて総てを知ることで。繋ぎとめいる錯覚を味わいたいと思うのだろう。同時に屈辱を味わいながらも。それでも。
無様だな。
聴こえるように嬌声をあげ、笑う。
それは自分への嘲笑でもあり、その先にいるヨミへの同情。
「無様だ」
呟き熱を伝えてくる体をきつく抱きしめると、その白い背に紅い爪跡を残した。
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