「蔵馬の髪って赤茶だと思ってたけど、こういう風の心地良い所で見ると真っ赤なんだな。綺麗だべ」
「そう?キミだって赤いだろ」
「いんや。オレのは赤に見せかけて実はオレンジだかんな」
「いいじゃないか。炎の色。いや、キミの場合太陽の色と言ったほうが相応しいかな。オレはキミの髪の色のほうが綺麗だと思うけどね」
「そっか?オレはこの色見飽きてっかんなー。にしても、太陽の色なんて言われたのは初めてだべ。オレが太陽なら、蔵馬の髪は――」
「血の色。桜と同じだ。オレの髪の赤は、妖狐のときに無意味に殺してきた妖怪たちの血の色なんだ」
「……蔵馬?」
「日本にはこんな説話があってね。桜の花びらは本当は白く、それが薄紅なのは根元に埋まっている死体の血液を吸っているからなんだ」
「だから、血の色」
「そう。だからオレの髪の色はキミが言うようなそんな綺麗なものじゃない。もっと穢れた色なんだよ」
「はー。頭良いのに、暗いこと考えんだなー、蔵馬って。それはあくまで想像だべ?だったら、もっと明るいこと考えねぇと。折角の心地いい風も、湿ったもんになっちまうべ」
「仕方がないさ。これ以上のオレの髪の色に対する良い説明がない。それとも、キミが何か良い理由でも考えてくれるのかい?」
「そっだなー。うーん。あ。幽助と同じ、魔族大隔世とか」
「それはないな。オレは狐として生まれてるし。それに、元の南野秀一がそうなのだとしたら、憑依するときにきっとオレは殺されていただろう」
「あ、そっか。じゃあ、あれだべ。蔵馬は憑依するとき瀕死だったんだから、そんときの血が今の体に染み込んだってのはどうだべ?」
「それも、ないと思うけど」
「だったら、何だったら納得するんだ?蔵馬の言う桜の話だって、考えてみたらおかしいべ」
「そう?」
「だべ。ま、オレは理由なんてどうでもいいんけどよ。大切なのは、今蔵馬がオレと一緒にいてくれるってことだし」
「…………」
「何だべ?」
「それって、告白?」
「ばっ。ばっかいうでねー」
「陣。訛りが変になってるよ」
「笑うでねーよ。ったく、人が折角励ましてやっとっとに」
「あはは。ごめんごめん。……陣」
「なんだ」
「ありがとう」
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