小話(蔵鵺)

「今日の仕事も楽勝だったなぁ、蔵馬」
「そうだな」
「楽勝過ぎるってのも、考えもんだよな」
「……そうだな」
「どっかに刺激、ねぇかな」
「刺激、欲しいのか?」
「まぁな。体、鈍りそうだし。あー、刺激が欲しー」
「…………」
「って。オイ」
「何だ?」
「それはこっちの台詞だって。何なんだよ、いきなり押し倒したりなんかしやがって…」
「鈍いな。こういう状況になったら、この先、何をするかくらいは分かるだろう?」
「ち、ちょっい待ち」
「……何だ?」
「俺が、下なのか?」
「刺激が欲しいのだろう?オレは、刺激を与えたいと思っていたところだし」
「…………」
「そういうことだ」
「…………」

(2004/9/14)





色(蔵陣)

「蔵馬の髪って赤茶だと思ってたけど、こういう風の心地良い所で見ると真っ赤なんだな。綺麗だべ」
「そう?キミだって赤いだろ」
「いんや。オレのは赤に見せかけて実はオレンジだかんな」
「いいじゃないか。炎の色。いや、キミの場合太陽の色と言ったほうが相応しいかな。オレはキミの髪の色のほうが綺麗だと思うけどね」
「そっか?オレはこの色見飽きてっかんなー。にしても、太陽の色なんて言われたのは初めてだべ。オレが太陽なら、蔵馬の髪は――」
「血の色。桜と同じだ。オレの髪の赤は、妖狐のときに無意味に殺してきた妖怪たちの血の色なんだ」
「……蔵馬?」
「日本にはこんな説話があってね。桜の花びらは本当は白く、それが薄紅なのは根元に埋まっている死体の血液を吸っているからなんだ」
「だから、血の色」
「そう。だからオレの髪の色はキミが言うようなそんな綺麗なものじゃない。もっと穢れた色なんだよ」
「はー。頭良いのに、暗いこと考えんだなー、蔵馬って。それはあくまで想像だべ?だったら、もっと明るいこと考えねぇと。折角の心地いい風も、湿ったもんになっちまうべ」
「仕方がないさ。これ以上のオレの髪の色に対する良い説明がない。それとも、キミが何か良い理由でも考えてくれるのかい?」
「そっだなー。うーん。あ。幽助と同じ、魔族大隔世とか」
「それはないな。オレは狐として生まれてるし。それに、元の南野秀一がそうなのだとしたら、憑依するときにきっとオレは殺されていただろう」
「あ、そっか。じゃあ、あれだべ。蔵馬は憑依するとき瀕死だったんだから、そんときの血が今の体に染み込んだってのはどうだべ?」
「それも、ないと思うけど」
「だったら、何だったら納得するんだ?蔵馬の言う桜の話だって、考えてみたらおかしいべ」
「そう?」
「だべ。ま、オレは理由なんてどうでもいいんけどよ。大切なのは、今蔵馬がオレと一緒にいてくれるってことだし」
「…………」
「何だべ?」
「それって、告白?」
「ばっ。ばっかいうでねー」
「陣。訛りが変になってるよ」
「笑うでねーよ。ったく、人が折角励ましてやっとっとに」
「あはは。ごめんごめん。……陣」
「なんだ」
「ありがとう」

(2004/10/12)





ノータイトル。(蔵←飛vsコエ)

「……で。何で貴方たちがうちにいるんです?」
「こいつが部屋の中に居たので、心配になって来てやったんだ。」
「何を抜かすか。こやつが窓を壊そうとして部屋に入ろうとしたから。ワシがその前に中から開けてやったんだろうが」
「………まぁ別に。どっちでもいいんですけどね。とりあえずは二人とも、部屋を覗いてたってことですよね?」
「う」
「あ」
「全く。そうだ、飛影。貴方には合鍵渡してあるんですから。いい加減、窓から入るの止めてくれません?」
「なっ…合鍵!?」
「ええ。何か不満でも?」
「何故ワシにはくれんのだ?」
「それは…」
「蔵馬は俺が部屋に入ることを許したが、貴様は許さなかったというだけのことだろう」
「うるさいっ。お前には訊いとらんわ。本当か!?」
「あのねぇ。そんな簡単に飛影の言うこと信じないで下さいよ」
「では違うというのだな?」
「違います。貴方は鍵なんてなくても自由に入れるでしょう?だからですよ。飛影はオレがわざわざ窓を開けるか、そうでなければ壊して入ってきますからね」
「苦労しとるんだな」
「……あのねぇ。まぁいいですけど。……だから、合鍵を渡したんですよ。分かってるんですか?」
「す、すまん。癖で、つい、な」
「全く」
「だが待てよ?それでも飛影が部屋に入るのを許したことにかわりはないではないか。ワシには勝手に入るなと言っておるのに!」
「あのねぇ。許そうが許すまいが、勝手に入ってくるでしょう。貴方たちは。現に、今も」
「…………」
「ふん。だったら追い返せばいいだろう?」
「じゃあ、追い返しましょうか?」
「う……」
「なんてね。冗談ですよ。それに、オレとしても、自分の見えないところで見られてるよりは、見えてるところで見られてるほうがまだマシですからね」
「ならば…」
「だったら、ワシはいつもお前の見えるところで見ていてやろう」
「きっさま。人の台詞をっ」
「ふふん。言ったもん勝ちだ」
「だったら、俺もいるぞ」
「は?」
「蔵馬の傍に一人しかいられないわけではないだろう?それに、貴様のことだ。何かやましいこと企むかもしれんからな」
「それはお前だろう」
「ふん」
「……あのねぇ。そこで勝手に話を進めないで下さいよ。言っときますけど、そこにオレの意思はありませんからね」
「何をいっとるんだお前は」
「そうだ。貴様が見えるところで見られたいと言ったんだろう?」
「言ってませんよ。見られたい、なんて」
「我侭だな。だったら、何なら言いというのだ?」
「我侭って…。じゃあ言いますけどね。ずっと見るなというのは酷でしょうからね、言いませんけど」
「言っとるではないか」
「でも、守る気ないでしょう?」
「…………」
「こいつの戯言はいい。さっさと言え」
「頼むから、年越しくらいは静かにさせてくれませんか。貴方たち、ここにいてもいいですから」

(2004/12/31)
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