いじわる |
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「一体どうしたら、君のお兄さんとの関係を認めてもらえるのかな?」 「どうしたって、認められません。だって私、兄が好きなんですから」 「分かってるかい?君たちは兄妹なんだ」 「人間界ではどうかは分かりませんが、少なくとも魔界には兄妹で恋愛をしてはいけないという法律はありません。それをいうなら蔵馬さんたちは男同士ですよ?」 「人間界には男同士で恋愛をしてはいけないという法律はないよ。この日本じゃ結婚は出来ないけどね」 「でもどうして私の許しが必要なんです?兄は私が何も知らないと思っているはずです」 「それでも君は知っている。知っているからにはオレはちゃんと了解を得たいんだよ。なんと言っても、君は彼の大切な妹なんだから。オレにとっても大切な人であることにはかわりない」 「だから私に嫌な思いはして欲しくない、と?」 「まぁ、そういったところかな」 「だとしたら、どう頑張ってもそれは無理ですよ。……例え、蔵馬さんが兄と別れたとしても」 「別れたら認めてもらう必要はない」 「そうじゃなくて。私が嫌な思いをしなくなるということが、そもそも無理なんです」 「君たちが結ばれない限り?」 「それでも無理です」 「じゃあどうすればいいのかな?……君の望む倖せって、何?」 「知りませんでした?私本当は、蔵馬さんが好きなんです」 「――え?」 「やっぱり」 「でも、君は。飛影が好きなんじゃ……」 「それは、あなたが兄を好きになったから」 「どういう、意味だい?」 「少しでも蔵馬さんに近づきたかったんです。兄を好きになれば、蔵馬さんの気持ちが分かるんじゃないかって……」 「……それで?オレの気持ちは分かったのかな?」 「分かりません。ただ、余計に辛くなっただけです」 「余計に?」 「蔵馬さんが。私の本当の気持ちを知らないから。自分と兄との関係を認めてもらおうってこうやって……会いに来てくれるのはとても嬉しいけど……その度に兄との親密さを思い知らされて」 「それは……。すまない。気付かなかったオレのミスだ」 「だから、私はどうやっても倖せにはなれないんです。だって蔵馬さんは私が認めなかったとしても兄から離れるつもりはないんでしょう?だからこうして説得しに来てる」 「でも、ごめん。オレは君の気持ちには答えられないよ。オレが好きなのは飛影だから」 「双子なのに。元は一つだったのに。どうして……」 「ごめん」 「……別れなければ」 「え?」 「生まれてくるとき、私と兄とが別れないで一人として生まれていれば。私も蔵馬さんに愛してもらえたんでしょうか?」 「……もし、君たちが。一人として生まれていたら。そもそもオレと出会うことはなかったさ。飛影は、君を探し出すために人間界へ来て、オレと出会ったんだ」 「そうでしたね。……それじゃあ私は、兄に感謝しなければいけないんですね。そして、兄と私を別々に産んだ母にも」 「君は……。だからそんなにも飛影のことを?」 「愛と憎しみは紙一重って本当ですよね。少し見せる部分を変えただけで、みんな騙されてしまう」 「そう、だね。オレも騙された。まさか、君の彼への思いが愛じゃなく憎しみだとは思わなかったよ」 「だから、蔵馬さんの気持ちが分からなかったのかな」 「そうかもしれないね。オレは本当に飛影を愛しているから」 「……私の気持ちを知っても、はっきりと言うんですね」 「ごめん。でもこれだけは譲れないから」 「ねぇ、蔵馬さん」 「なに?」 「じゃあせめて。蔵馬さんの家族のように、私も、その、家族、として。愛してくれますか?」 「ああ。勿論」 「ふざけて抱きしめたりとかも?」 「飛影からの許しが出たらね」 「親愛のキスも?」 「……飛影からの許しが出たら、ね」 「抱いてく――」 「雪菜ちゃん。君は。……オレに死んでもらいたいの?」 「一度だけでいいんです。兄から許しが出たら、構いませんか?」 「それは駄目だ」 「どうして」 「余計、君が辛くなるだけだから」 「そんなの」 「分かるよ。だって、オレの気持ちは変わらないって分かってるから。例え、飛影の気持ちが変わっても、ね」 「そんなの。そんなのっ……」 「だから、彼を憎んでもしょうがないんだ。憎むなら、オレだよ。君の気持ちを知っても振り向かないオレを憎むベきだ」 「……いじわる」 「ごめん」 「でも。許します。兄とのこと。……そうしないと、家族としての蔵馬さんからの愛も貰えなくなってしまいますから」 「雪菜ちゃん……」 「それでも、好きです。……好きでいるだけなら、いいですよね?」 「……君が、それで構わないのなら」 「…………いじわる」 |
好きな人の真似をする。 発想が中学生のようだよ、雪菜ちゃん。 しかしそのスキルは流石というしかないよ。 |
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