Jealousy
アマユキさんのサイト【片隅物置】にある『妖雪学園』の設定を借りています。


「くらまっ……」
「飛影。愛してるよ」
「俺もっ、あいし――」


 準備室に誰かいるとは思っていた。だけど、まさかこんな場面を目撃することになるなんて思わなかった。
 兄と、蔵馬先生が付き合っているというのは、分かっていたつもりだけど。
 でも、そんな。こんな……。
 目の前の光景に耐えられなくて、踵を返した途端、誰かにぶつかった。
「っと。どうした?」
 降って来た声に見上げると、そこには不思議そうに私を見つめる金色の目があって。私と目が合うなり、腕を掴んで強引に廊下へと連れ出した。
 私はその腕に引き摺られながら、気が付くと涙を零していた。

「ったく、あいつらも。……学校でするなら鍵をちゃんと閉めろっていってるんだがな」
「せんっ、せいは。知ってたんですか?」
 あれからどれくらい時間が経っただろう。涙がまだ完全に止まらないせいで、声が途切れ途切れになる。
 妖狐先生に視聴覚室まで連れられた私は、先生の膝の上で、その腕に抱かれるようにして泣いていた。
「まぁな」
 素っ気無い返事。だけど先生の左手は私の右手をしっかり絡んでいて。空いた手は私の頭をずっと撫でていてくれている。その優しさに、余計に涙が滲んでしまう。
「どうして、兄はあんな……」
「好きなものは仕方がないだろう。外野がとやかくいうことじゃない。……それともお前は内野に行きたいのか?」
「――え?」
 驚いた。静かだけれど、明らかに怒っている声だった。何に怒ってるのか分からない。さっきまで優しかったのに。
 怖くて。先生の顔を見るのが怖くて。でも離れるのも嫌で。その胸に額を押し付けていると、私の頭を撫でていた手が顎にまで滑ってきた。
 嫌なのに、顔を上げさせられる。
「妹として兄を想う気持ちは分からないでもない。だが、そこまでいくと異常だ」
 目を合わせたくないのに、一度合ってしまった目をそらすことが出来ない。窓から差し込んでくる夕日で、先生の目が不気味に光って見える。
 とても怖いと思った。こんな先生、私は知らない。
 先生はいつも言葉は少ないけど、優しくて。その目も、手も、声も、とても優しくて。
「それとも、お前は兄が好きなのか?」
 冷たい声。とても怖かったけれど、私は、違う、とはっきりと言った。
「違います。私が好きなのは先生だけです」
「だったら他の奴が何をしていようと気にするな。お前のその行為が俺を苛立たせているが分からないわけではないだろう?」
 分からない。分からなかった。私、先生を嫉妬させていたの?
 だってそんな。どれだけ私が好きだって言っても、まともにとりあってはくれなかったのに。
「雪菜」
 先生の声が優しいものに変わる。目も、いつの間にか優しくなっていた。だけど、顎を掴んだ手は離れない。
「先生。先生は、私のこと……」
 どう想っているんですか。そう訊こうとして、出来なかった。私の口は先生に塞がれて。
「泣くなら、俺のことだけにしておけ」
 唇を離した先生は、そう言うと私の頭を自分の胸に押し付けた。
「はい」
 頷いた私は、今度は嬉しさに、先生の胸で涙を零した。



【オマケ】
「落ち着いてって」
「落ち着いていられるか。あのロリコン教師がっ」
「だから。オレたちも同じようなものでしょう?今君が二人の仲をとやかくいったら、それはつまりオレたちに帰ってくるんだよ?」
「だがっ……」
「誰が誰を好きなったっていいじゃないか。オレが君以外の誰かを好きになったわけじゃないんだから。違う?」
「……大体お前が。あんなところで始めなければあいつらだって」
「でも。気持ちよかったでしょう?」
「…………」
「でしょう?」
「五月蝿いっ。この、変態教師が」
「まぁ、それは否定しませんけどね」
「……ふん」
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