STARY BEAST
「なっ」
 飛影は訳が分からず、ただ、引き裂かれた服がベッドに落ちてゆくのを見ていることしか出来なかった。そして蔵馬は、そんな飛影を見て、口元に薄っすらと笑みを浮かべていた。
「何をっ!?」
「何って。まぁ、色々とね」
 体中に纏わりついてくる蔓を何とか解こうと飛影は体を動かしてみるが、抵抗すればする程それは纏わりついて行き、更に自由を奪った。その間に、蔵馬は椅子に深く腰掛けていた。自分の目線と同じ高さまで、持ち上げた飛影を降ろす。
「これを解け」
「駄目です」
「抵抗はしない。……したこと、ないだろう?」
「抵抗するとかしないとか。そういう問題じゃないんですよ」
 楽しそうに言うと、蔵馬は腕を組んだまま指先を僅かに動かした。それは蔵馬の植物たちへの指令で。それを受けた彼らは、飛影の体の上でゆっくりと動き始めた。
「それ、以上、続けるならっ。火事に、なっても知らないぞ?」
 甘い声が出るのを抑えながら、蔵馬を睨みつけて言う。それは困るな。呟くと、蔵馬はまた指先を動かした。
「だったら早くこれを……っは」
「大丈夫。炎を呼べないようにしてあげますから。オレと彼らの付き合いは長いから、さほど集中しなくてもこうやって自由に動かせますけど…」
「っ」
「貴方はまだ若いですからね。炎との付き合いも浅い。それなりに集中しないと、オレの植物を燃やせるほどの炎は呼べない。そうでしょう?」
 クスクスと微笑う。飛影はそんな蔵馬から目を反らすと、ギリ、と歯軋りをした。だが、その口もすぐに開けられてしまった。飛影の口から、甘い吐息が漏れる。飛影の体に纏わりつく蔓は、いつの間にか先程より倍に増えていた。
 あるものは体のラインをなぞり、またあるものはその胸の突起を刺激する。全てはバラバラに動いているようでいて、それは飛影の感じるところを的確についていた。
「飛影って、割と心と体は同じ人だと思ってたのに。違うんですね」
「くっ…」
 蔵馬の言葉と共に、飛影の体の上を這っていた蔓の何本かが動いて、頭をもたげ始めた飛影のそこに絡みついた。射精を防ぐように根本を締め上げる。
「オレの手じゃなくても、感じるんだ」
 ちょっと残念、とさほど残念がった様子もなく呟く。根本を締め上げている蔓とは別の蔓が、蔵馬の言葉を証明するように、飛影のそこを扱き始めた。先から滲んでくる液を掬っては、それを潤滑剤にし、更に刺激を与えていく。
「きっさまが…」
 見ているからだろう。そう続けようとしたが、出来なかった。言葉を発しようと開いた飛影の口にも、何本かの蔓が入り込んで来ていた。
「まぁ、貴方の性感帯を知り尽くしているオレが操ってるわけですから、感じるのも仕方がないのかな、という気はしますけど」
 違う、と飛影は言いたかった。感じているのは誰でもいいというわけでも、その動きが蔵馬に似ているからでもなく、今こうして蔵馬が自分を見ているからなのだ、と。だが、体だけでなく口内にまで蔓が入り込んでいる状態では、何も言う事が出来なかった。零れてくるのは甘い吐息と、飲み込めなかった唾液。
 唯一自由を許されているのは視線だったが、それで蔵馬を睨みつけることは出来なかった。蔵馬を睨みつけると言うことは、その眼を直接見てしまうことであるからだ。チラチラと横目で見ただけでも分かる、蔵馬の興奮。それを生み出しているのが自分なのだと思うと、飛影の体は熱くなった。それを、直に見てしまったら…。
「ねぇ、飛影。天井ばかり見てないで、オレにその綺麗な顔を見せてくださいよ」
 オレを求めるような、顔を。呟くその口調はあくまで穏やかなのに。蔵馬の声には有無を言わせない所が合った。飛影の顔が、導かれるようにゆっくりと蔵馬を向く。
 その眼を見た瞬間、蔵馬は思わずニヤリと微笑ってしまった。
 深紅の眼は、今までに見たことのないほどに、蔵馬を求めていた。
「そんなに、煽らないで下さいよ」
 今すぐに犯してしまいたい衝動を抑えて言うと、蔵馬はまた別の指令を蔓に送った。飛影の口内に入っていた蔓が、飛影の中心を通り過ぎ、その後ろの窪みに辿り着く。それとほぼ同時に、飛影は更に足を開かされ、そして体の向きを90度変えられた。蔵馬の目の前に、更なる刺激を求めて収縮を繰り返すそこが曝される。
「っ」
 そのことに気づいた飛影は、何とか足を閉じようとしたが、既に力が入りづらくなっている上、何本も絡み付いている蔓には勝てず、逆に更に足を開かされる結果になってしまった。
「やめろっ」
「何を?」
「……何を、だと?」
 入り口をなぞったり押したりするだけで一向に入ってくる気配のない蔓たちに、焦れたように腰を振る。無意識なのだと思われるその行動に、蔵馬は微笑った。
「足を開かせていることを?植物に犯させていることを?それとも、この行為そのものを?」
 蔵馬が言い終えると、それを合図にしたかのように蔓の幾つかが飛影の中へと侵入した。蔵馬の問いに答えようと開けた口から、次々と甘い吐息が零れてくる。
「……行為は、止めて欲しくないみたいですね」
 唾液を垂らしながら喘ぐ飛影に微笑うと、蔵馬は更に蔓を侵入させた。
 幾つもの絡まった蔓。見た目には一本の太いものが入っているように見えるが、その奥ではバラバラに別れ、蠢いていた。その今まで感じたことのない動きに、飛影は一瞬、我を忘れそうになった。
 それを思い留まらせたのは、きつく絞められたままにされている中心の痛みだった。
「くらっ、ま。これ、外っ…」
 何とか頭をもたげ、蔵馬を見ると、飛影は漏れてくる声を押し殺して哀願した。その視界に戒められている自分のそこが映り、頬を朱に染めながら。
「ああ。忘れてました。貴方が止めて欲しかったのは、それなんですね。いいですよ。貴方を苦しめることが目的ではないですし」
 蔵馬が言い終えるよりも先に蔓はあっさりとその戒めを解いた。その代わり、何本もの蔓で飛影のそこを扱き上げる。すると、飛影はあっけなく吐精してしまった。飛影の精を受けた蔓がいやらしい輝きをみせながら、その体を這いずり回る。
 飛影は何とか呼吸を整えると、再び頭をもたげ、蔵馬を見つめた。
「も、くてき…だと?」
「あれ?最初に言いませんでしたっけ?」
「……聞いてなっ。ぁっ」
 中心への戒めは消えたものの、体を這いずり回る蔓と、後ろで蠢いている蔓は動きをやめていない為、飛影はその甘い刺激に背を仰け反らせた。蔵馬の変わりに、視界に天井が映る。
「いつもと同じやりかたじゃつまらないなぁ、と思いましてね。ちょっと、試してみたくなったんですよ。貴方の体は心同様オレだけを求めているのかどうか」
「まるで、俺の心はお前を求めているとでも言うよう、だな」
「そうですよ」
 すぐ耳元で聞こえた声。驚いて横を向くと、いつの間にか、蔵馬が飛影を見つめていた。手を伸ばし頬に触れ、今日初めてのキスを交わす。
「渇望してるでしょう?オレを。でも、それは心だけだったんですね。オレは、心も体も飛影を欲しているのに」
「違うっ。俺は―――っ!!」
 言葉が途切れ、飛影は声にならない悲鳴を上げると体を大きく仰け反らせた。後ろに入れられた蔓の動きに合わせ、小さく吐息を漏らす。
「どこが違うって言うんですか。まぁ、ちょっと淋しいですけど。貴方が淫乱だって分かっただけでもよしとしますよ」
 また、大して残念そうでもない口調で言うと、蔵馬は飛影から離れようとした。
「って」
 それに気づいた飛影は、力の入らない手を無理矢理に伸ばすと、蔵馬を掴まえた。
「飛影?」
「お前が、そういう風に俺を見るなら、それで構わない。だがお前がこれ以上俺を苦しめたくないのなら、今すぐこいつらを片付けろっ」
「苦しめる?冗談でしょう?貴方、充分に善がってるじゃないですか」
「ふざっ、けるな」
 軽い口調で言う蔵馬を飛影はキッと睨みつけると、掴んだ手を思い切り引いた。バランスを崩した蔵馬に、唇を重ねる。
「お前に、辱められるのも悪くない。お前が見ているのなら、俺はそれだけで満足できる。だが、このままお前なしで、お前以外のものに犯され続けるのはごめんだ」
 どうせ乱れるのなら、蔵馬とが良い。飛影は蔵馬から手を離すと、荒く上がった声で言った。途端、蠢いていた蔓が、その動きを止める。
「……参りました。オレの負けです」
 暫くの沈黙のあと、溜息混じりに呟くと、蔵馬は飛影の体に纏わりついている蔓を全て片付けた。支えを失いベッドに落ちる飛影を、抱きかかえる。
「じゃあ、貴方は心も体もオレを求めていると思ってもいいんですね?」
「ふん。好きに解釈すれば良い」
 顔を覗きこんでくる蔵馬に飛影は呟くと、先を促すような深いキスをした。




くらひ村に捧げたもの(多分4年位前に書いたもの)。
仮タイトルが『植物エロ』というのも、どうかと思いますよ、自分。
タイトルは岡本仁志という人のアルバム曲から。
♪いつもと同じやりかたじゃちょっとツマラナイな
 触れる心の深さを測るはかりが欲しい♪(歌詞うろ覚え)
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