Sweet Kiss
「甘いな」
 長い口付けのあと、飛影は呟いた。なに、と聞き返す蔵馬に、今度は自ら唇を重ねる。
「チョコの味がするぞ」
「ああ」
 飛影の言葉に頷くと、蔵馬はベッドから下り、机に山積みになっている箱の一つを手にして戻ってきた。包装を解き、それを飛影に差し出す。
「何だ?」
「会社の女の子たちから貰ったんです。あなた、確かチョコ好きでしたよね」
「ふん。それは貴様がもらったものだろう?貴様が処分しろ」
「今は、オレがあなたにあげてるんですよ?」
「屁理屈だな」
「どうとでも」
 不意に微笑った蔵馬に飛影は少しだけ顔を赤らめたが、それでも箱に手を出そうとはしなかった。仕方がないですね。呟いた蔵馬が、チョコを一欠けら口に含む。
「これなら受け取ってくれるよね?」
 飛影の頬に手をそえ、口移しでチョコを受け渡す。融けかけのそれは、一度は飛影の口に入ったものの、すぐに舌で押し戻された。唇を離した蔵馬が、怪訝そうな顔をする。
「それは、俺からの贈り物だ。今日は好きな奴にチョコをあげる日なんだろう?」
 口元を伝う色のついた唾液を手の甲で拭うと、飛影はそう言ってしたり顔で笑った。それに俺はビターチョコは好かないんでな、と付け加える。
 飛影の言葉のどっちが言い訳なのだろうか、と蔵馬は一瞬迷ったが、どちらも本心ということにしておこうと思い直した。別にどっちが言い訳だからといって、飛影の行動が無かったことになるわけじゃないし。
「こんな渡し方するんだから、義理じゃないですよね?」
「さあな」
 蔵馬の言葉に、飛影が目をそらしながら返す。その頬が僅かに赤くなっていることに気付いた蔵馬は、目を細めて微笑うと、手にしている箱の中からホワイトチョコを選びとると、再び自分の口にそれを放った。



いい加減、バレンタインというものを飛影さんは覚えたようです。
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