freedom...?
「貴様を殺せたら、俺は自由になれるのだろうな」
 オレの髪を指先に巻きつけながら、彼は言った。そのまま引き寄せて、喉笛に軽く噛み付いてくる。
「何、言ってるんですか。好き勝手に生きてるくせに」
「好き勝手しているのは貴様の方だろう?」
 彼の言葉に、確かにそれもそうだな、と。首筋に跡をつけながら思った。けど。
「オレが貴方を自由に出来るのは今だけだから」
 どうせ事が終わったら。朝陽をともに浴びることなく出て行ってしまうくせに。
「……こんな小さな束縛でも嫌ですか?寧ろオレには、貴方の方から不自由を求めて来ているようにしか見えませんが」
 嘘吐き。心中で自分に呟く。
 彼にそれを最初に教えたのはオレではない。ただ彼は手頃な相手を探すのが面倒だからここに来ているだけだ。オレが彼に心を許したいと思っていることを知っていて。寝首をかかれることはないと分かっていて。だから、オレの下へ来ている。ただ、それだけ。分かってるさ、そんなこと。
 そう、総ては。オレの願望。
「……そうだな」
 願望なはず、なのに。彼は口を歪めて笑うとオレの言葉を肯定した。首に、腕を絡ませて見つめる。
「飛影?」
「だから貴様を時々殺したくなる。こんな不自由も悪くないと思わせてしまう貴様を」
 引き寄せられ、唇が重なる。
 殺さなくても。嫌ならば、来なければいい。
 そうだ。何も、殺さなくても。
 もしかして、オレの存在自体が彼の自由を奪っているのか?その思考すら。
「ねぇ、飛影」
「何だ?」
 もしかして。貴方はオレを好きになってくれたの?
「……オレは、貴方のことが好きだよ」
「もったいぶらせた割にはまたその科白か。聞き飽きた」
「オレは、言い飽きてないから」
 溜息をつく彼に、無理矢理な笑顔を作ってみせる。彼はそんなオレに容易く騙されるから。
「馬鹿が」
 呟くと、好きにしろ、とでも言うように全身から力を抜いた。その姿が、何故か哀しくて。
「……貴方になら、殺されてもいいですよ」
「何を、言ってるんだ?」
「殺されてもいい。そう思っただけです。別に今すぐ殺せなんて言ってませんよ。オレに飽きたら、その時は、殺せばいい」
 真っ直ぐに見つめる目が揺らいで見えるのは、オレのせいなか、それとも彼のせいなのか。
 でも、彼の表情にオレは気づいてしまった。
 彼は、オレを殺せない。いや、殺すことは出来るかもしれない。でもその時は、そのときこそが本当に。
 彼から、自由がなくなるときだと。
 恐らく、その事実に彼自身、自覚はなくとも何処かで気づいているのだろう、と。
「ねぇ、飛影。好きだよ」
 だとしたら、オレは。彼に殺されることを望んでいるのかもしれない。自覚はなくとも。心のどこかで。
 彼を、手に入れるために……。




自由になりたい?本当になれる?
自由とは孤独であることなの?
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