雨宿り
「これじゃあ、あなたがオレの所に来た意味がないですね」
 首筋を伝い落ちる雫を遡るようにして舐め上げ、蔵馬が言った。俺はその言葉の意味が分からなかったから、ただ睨みつけた。薄く微笑った蔵馬が、唇に触れる。
「雨に濡れないために来てるのに、全身ずぶ濡れ」
「……濡れたわけじゃない。これは俺のだ」
「オレの汗も、混ざってますよ」
 繋がったまま体を捻り、俺をベッドへと押し付ける。一度だけ蔵馬が腰を打ちつけると、その顎を伝って、俺の胸に汗が落ちた。
「ほら、濡れた」
「これくらい、濡れたうちに入らん」
 手を伸ばし、蔵馬の首を掴む。ぬるりとした感触に滑らないよう手に力を入れると、蔵馬の顔が僅かに歪んだ。
 構わず上体を少し持ち上げ、顎を伝う汗を舐め取る。そのまま舌を滑らせようとしたが、再び動き出した蔵馬に、俺はベッドに背をつけてしまった。
「く、そ」
 笑う蔵馬が悔しく、掴んでいた首に爪を立てる。それでも笑みを浮かべたままだったから、思い切り引っかいてやると、ようやくうめき声を上げた。
「……傷、出来ると。汗染みるんだけど」
「それなら、外でするか?」
「何?」
「雨で洗い流しながらすれば、染みることはないだろう?」
 笑って、蔵馬の欠片のついた指先を舐める。抉り方が足りなかったのか肉の味を感じることは出来なかったが、代わりにベッタリとついた蔵馬の汗の味がした。
 分からない。そう言いたげな目が、俺を見つめる。
「貴様は。俺が本当にそれを目的にここに来ていると思っているのか?」
「……飛影、それって」
「外でするのか? それとも、このまま続けるか?」
 蔵馬の言葉を遮るように俺は言うと、その首に両腕をかけた。そして、決断を急くよう、ゆっくりと腰を動かし始めた。





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