Full Moon
「満月の夜、狼に変身する人間がいるらしいな」
 首筋に噛み付くオレに熱い吐息を交えながら、彼は言った。
「だが、お前は狐だ」
 本気で言っているのか、それとも意地悪のつもりなのか。その目を覗き込んでみるが、よく分からない。分からないから、オレは分かったような笑みを見せると、再び彼の首筋に噛み付いた。彼のにおいを胸いっぱいに吸い込みながら、体を倒す。
「本能じゃないから、意味がある。オレは人間になってよかったと思いますよ」
 理性で、彼を求める。もしオレに、妖怪としての本能しかなかったら、ここまで彼を強く想うことはなかっただろう。それは時として傷のない痛みをオレにもたらすが、悪い気はしない。
「人間もどきの間違いだろう」
 後頭部の髪を掴み、オレの顔を引き離すと、彼は今度こそ意地の悪い言葉を吐いた。歪んだ口元。だけど、その目の奥に不安を見出したオレは、何も言い返さず唇を重ねた。彼の不安を掻き乱すように、深く。
「性欲の塊が」
「だとすると、飛影はオレの月なのかもしれませんね」
 荒れた呼吸。その合間を縫うように呟いた彼に微笑ってはみたけれど。次々と沸き起こってくる衝動に、さっきの自分の言葉は強ち間違っていないのかもしれないと思うと、少しだけゾッとした。



飛影は、蔵馬を人間らしくも妖怪らしくもさせる。
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