ランドリー
 腕の傷の治療を終えると、蔵馬は少し身を引いて俺を眺めた。それから着衣に手をかけると、脱いで、と言った。
 いつもとは様子が違うと思ったが、俺はいつもの調子でカタチばかりの抵抗をした。
「断る」
 吐き捨てるように言い、蔵馬の手を払う。だが、俺がそうするよりも先に、蔵馬の手が離れていった。訝る俺に、違いますよ、と苦笑する。
「洗濯をしようと思っただけです。今更かもしれませんが、そんな泥だらけの姿でベッドに居座られるのも、やっぱり少し困りますから。……それとも、何か他のことを考えていたんですか?」
 再び俺の体に触れ、布越しに何かを煽るように指先を動かす。口からはクスクスと楽しげな笑い声が漏れていて、苛立った俺は今度こそ蔵馬の手を振り払うと、立ち上がって服を脱いだ。丸めて蔵馬の顔面に投げつける。
「これでいいんだろう」
「ええ。……ちょっと待っててください。今、何か着るものを持ってきますから」
 オレのだから大きいですが、とベッドから降りようとする蔵馬の言葉を、構うな、と遮る。振り向いた蔵馬の視線の先にあるものに気付いた俺は、顔に熱を持ったことを悟られないよう俯きながら座った。
「じゃあシャワーでも浴びますか? どうせ、洗濯が終わるまで部屋から出られないんですから」
 クスクスと癇に障る笑い声を上げながら、蔵馬が言う。
「包帯が濡れる」
「そんなこと、気にするあなたじゃないでしょう。それに、包帯ならまたオレが巻いてあげますよ」
 包帯の留め具を外そうと伸ばされた手。掴まれる前に俺が掴むと、強引に引き寄せた。そのまま体を倒し、蔵馬を仰ぎ見る。
「汗とか色んなもので、包帯、濡れますよ?」
「巻きなおせばいいだけの話だ」
「シャワーは?」
「終わってからだ」
「何が?」
 問われて、一瞬言葉に詰まる。そんな俺を見てまた蔵馬の口元が釣り上がるから、その髪を引き寄せると耳元で呟いた。――洗濯が、だ。
 セックスと言うとでも思っていたのだろうか。蔵馬は不満げな顔をして俺を見つめていたが、一瞬視線を外した後、そう、と呟くと嬉しそうに唇を重ねてきた。その時、汚れた服が洗濯機の中に放り込まれていなかったことを、俺はすっかりと忘れていた。



いつになったら終わるのやら。
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