「で、だから…」
ペラペラペラペラ、よく喋る。
「…となるわけだ。不二、聞いてるのか?」
「聞いてるよ。聞いてるから、続けて」
頬杖をついたまま、わざとらしく微笑ってみせる。と、彼は嬉しそうにつまらない話の続きを始めた。
退屈だ。
そりゃあ最初は、お互いよく知らなかったから、彼が話してくれる度に、一つ彼のことを知れたみたいで楽しかったし嬉しかったけど。
最近は、日を追う毎に彼の話はつまらなくなって行く。
もしかしたら、知る事が無くなってしまったのかもしれない。興味が消えた。だからつまらない。
「退屈そうだな」
「そうでもないよ。いいから、続けて」
嘘の笑顔に催促を付け足すと、彼はまた嬉々として話し出す。他の誰が見たって分かるだろう僕の心境も見抜けないなんて。情けない。
ま、どうでも良いけど。
テーブルの上で両手を組み直し、その上に顎を乗せる。じっと彼を見つめると、彼は更に饒舌につまらない言葉を連ねた。
ここまで来たら、もう、ゲームだな。
一体いつまで、僕の本音に気付かずにつまらない話を続けるのか。
彼にとっては一大事?でも、僕にとってはもう、どうでもいい事。
今から僕たちの関係は、単なるゲーム。でも、始まったからには、ゲームオーバーになるまで降りる事は出来ない。
だけど、そう思うと昨日より少しだけ楽しくなってくる。どこまで露骨な態度をとろうかとか。そんな無駄なスリル。
「不二?さっきから何見てるんだ?」
「別に。今日の乾は、昨日より良く喋るなって思って」
そんな退屈な話を。よくもまぁ、飽きないなって。不思議なんだよ。
「まぁ、日々話のネタを集めてるんでね」
これでも努力してるんだ、と少々恩着せがましく言うから。
「そっか。ありがとう」
僕は素直さを装って礼を言った。彼の顔が、誇らしげなそれにかわる。
この間抜けな事態に、もし彼が気付いたら。どんな顔をするんだろう。
夜が更けて来た事にも気付かず、ペラペラとどこまでも話しつづける彼を見ながら、僕は少しだけ微笑った。
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