幸福な王子


 特に何かをするってわけじゃないけど、気が付くといつも傍にいて。俺の名を呼び、微笑みかけてくれる。その声が好き。その笑顔が好き。全部が好き。多分、この人じゃないとそんな風には思わない。誰かひとりだけって思えるだけでも、俺は幸せもんなんだろうな。

 膝に座り、回された腕をぎゅっと掴む。
「っつ。どうしたの?リョーマ」
 食い込んだ爪。軽い苦痛に顔を歪めながら、先輩は言った。
「俺って、結構幸せもんなのかもしんないっスね」
 先輩の腕を取り、指を絡める。温かい、手。先輩は自分の手が嫌いだというけど、俺は好きだったりする。というより、先輩の嫌いなところを見つけるほうが難しい。
「唐突だね」
 クスクスと、耳元で微笑う。くすぐったくて。俺は耳を手で隠した。
「…駄目だよ、隠しちゃ…」
 言って俺の手を捕ると、先輩はその手に唇を落とした。触れられた所から波紋のように熱が広がってく。
「…不二先輩」
「いいよ、周助で。」
 誰も居ないんだから、と微笑う。
 俺は手を解いて立ち上がると、周助、と小さく呼んだ。何?と微笑った先輩…周助は、俺に手を差し出す。
 俺は手を取らずに抱きしめると、そのまま胸に顔を埋めた。周助の鼓動が聴こえる。
「好き。」
 その胸に向かって呟くと、今度は周助のほうがくすぐったいと笑う。
「顔、上げてよ」
 優しい声に導かれるようにして、俺は顔を上げた。周助の蒼く綺麗な眼と目が合う。
「僕も、好きだよ。リョーマのこと」
 言って微笑うと、周助は俺に口付けた。唇を離し、また、微笑う。
「……もしかしたら、僕の方が幸せ者なのかもしれないな」
 ポツリと漏らした周助の言葉。何故?と眼で問う。
「だって君は、手塚じゃなく、僕を選んでくれたから」
 嬉しそうに微笑う。その顔に見惚れていると、突然、俺は強く抱きしめられた。
「しゅうっ…」
「嬉しかったんだ。凄く」
 耳元で、囁く。
 周助の言葉と、抱きしめられた力強さと、伝わってくる体温。俺は自分の顔がみるみる紅くなっていくのが解かった。
 今この手を離して自分の顔を見られるのもなんか癪だから。俺は周助の背にぎこちない手つきで腕を回すと、強く抱き返した。
「俺も…。俺も、嬉しかった。周助が俺のこと好きだっていうのが解かって」
「じゃあ、この幸せは僕たち二人じゃなきゃ駄目なのかもしれないね。きっと他の誰でも、駄目なんだよ」
 耳元で囁かれ、腕の力が抜ける。謀ったように周助は俺の背から手を離すと肩を掴んで自分から引き剥がした。優しい視線が俺を包み込む。
「どうしたの?顔、紅いよ」
 微笑いながら言われて、俺は余計に顔を紅くした。見るな、と両腕で顔を隠す。が、その腕は簡単に捕らえられてしまった。
「可愛いよ。リョーマ。こんな顔、他の誰にも見せちゃ駄目だからね?」
 クスクスと笑みを溢すと、ゆっくりと俺を押し倒した。俺を見る蒼い眼。俺はそれから目が離せなくなっていた。されるがままに、床に背をつける。
「……好きだよ」
 暫く見つめ合った後、そう呟くと、周助は俺に口付けた。そのまま唇を首筋へと滑らせていく…。
「周助もっ…」
 背に手を回し、呟く。何?と周助が顔を上げる。
「周助も、俺以外の人に優しくしちゃ駄目だよ。周助は俺のもんなんだから」
「……え?」
 思いもしなかったのか、俺の言葉に周助は瞬時にして顔を紅くした。俺はニヤリと微笑って見せると、自分から周助に口付けた。





一生やってろ、バカップル!
大分前(約三ヶ月)に書いたモノです。アップしたつもりで、アップしてなかったみたいι
タイトルてきとーなのがバレバレ。だって、こういう話はタイトル付けが苦手ι
やっぱ、最後はリョーマくんの可愛らしい反撃が必要だよね。

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