大人の条件


「好きなんス。あんたのことが」
「嬉しいよ。でも、ごめんね。僕、大人なヒトが好きなんだ。例えば…手塚みたいなね」

 俺の告白は、あっさりと返され。でも、それは絶対の否定じゃなかったから。手塚部長が大人かどうかは別として、俺はその日から不二先輩につりあうような大人になろうと決心した。

 そんなわけで、あれから半年。
 三年が部活を引退したってことで、なかなか機会には恵まれなかったけど。テスト前で部活が休みなため、俺はやっとのことで先輩を掴まえることが出来た。
「――可愛いね、越前くんは」
 久しぶりに隣に並べたことが嬉しくて。今までのことを一気に話していた俺の頭を撫でると、先輩は微笑った。触れられることは嬉しいけど。これじゃ、半年前と何も変わってない。
「先輩。いい加減、俺のこと子供扱いするのやめてくれません?」
 頭の上にある先輩の手を取り、自分の指に絡める。けど。
「駄目」
 クスリと微笑うと、先輩は俺から手を離した。そのまま制服のポケットに両手を突っ込む。
 これじゃ、手ぇ繋げないじゃん。
 悔しいから、俺は先輩の腕を取ってみた。今度は拒まれない。それをいいことに、俺は恋人同士のように先輩に密着した。
「何で駄目なんスか?」
 先輩とは身長差があるから、ついつい上目遣いになってしまう。それが嫌で。俺はなるべく踵をつけないようにしてに歩いた。ちょっとだけ、距離が縮まる。
「だって、越前くん、まだ子供だもん」
 俺の背伸びを見透かすように、先輩が微笑った。慌てて、踵を地面につける。俺は自分の顔が一瞬にして赤くなったのを感じた。敵わない。追いつくすら出来ない。先輩はいつだって俺の一歩も二歩も先を行ってて。
「……先輩ばっか大人で。何か、ずるいっス」
 俯いて、わざとらしくぼやいてみる。と。聴こえているのか、いないのか。先輩が小さく微笑った。
 溜息、ひとつ。
「あーあ。俺も早く大人になりたいなぁ」
 その言葉にか、先輩が立ち止まった。俺の顔を覗き込む。
「越前くん。それは違うよ」
「へ?」
「大人にはね、『なる』んじゃなくて、『なっていく』んだよ」
 俺の目の前に人差し指を出し、微笑う。
「何、それ」
「背伸びしてる間は、子供だってコト」
 その人差し指で俺の額を軽く突くと、先輩はまた歩き出した。腕を組んでる俺も、半ば引っ張られるようにして歩き出す。
 背伸びしてる間は子供?それって…。
「自然体でいろってこと?」
「そ。」
 俺を見ずに頷く。その横顔に、俺は少しだけ不満を覚えた。
 自然体っていうのは、簡単そうでいて案外難しい。確かに、今、俺の隣にいるヒトは自然体だとは思うけど。でも、それはその他大勢といる時であって…。
「そーゆー自分はどうなんスか?俺には、手塚部長の前では背伸びをしているようにしか見えませんけどね」
 頬を膨らせて言う。先輩は俺を見ると、楽しげに微笑った。
「僕はいいの」
「何で?」
 先輩はよくて、俺は駄目。それって思いっきり不公平じゃん。
 訊き返す俺に、先輩は微笑うと宙を仰いだ。
「だって僕、子供だもん」
「は?」
「僕はまだ子供だよ。だから今のうち目一杯背伸びしておかなきゃネ。これ、子供の特権」
 屁理屈。ってか、もしかして、俺って遊ばれてる?
「ん?何?」
 呆れ顔で見つめる俺に、先輩は微笑いながら訊いてきた。これはかなり悔しい。大ダメージは望めなくても、反撃くらい、してみたい。
「………自分を子供だって判ってて行動するのってさ」
 言葉を切り、息を吸い込む。
「子供とか大人とか通り越して、オヤジな考え方っスよね」
 誰かさんのように、ニヤリと微笑って見せる。一瞬だけ、先輩の眼が開いた。
「……『まだまだだね』。」
 溜息混じりにいうと、先輩は俺にとびっきりの笑顔を見せた。





もとはは会話だけだった話。
不二リョって書くと落ち着くね。平和だよ。ほのぼのだよ。
リョーマくん、可愛いよ!
背伸びしてるくらいが可愛いって、リョーマくんは。

ほら、またタイトルてきとーだからι

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