ふたり


 月明かりに照らし出される、あどけない寝顔をずっと眺めていた。
「リョーマ」
 そっと、その名を呟く。
「………ん。」
 僕の声が聞こえたのか解らないけど、彼は小さく声を漏らした。寒いのか、僕のほうに少しだけ体を寄せてくる。
 猫のように丸まって眠っている所為で、僕は彼を抱きしめることが出来ないでいた。それでも。微かに触れ合う箇所から、彼の体温を感じる。服を介してという事実が、酷くもどかしいものではあるが。
 けれど、それは仕方がない。家族以外のヒトをこんなにを大切にしたいと思ったのは初めてで。それだからこそ、彼の嫌がることはしたくない。彼が望むまでは、僕は自分の衝動に耐えるしかない。
 腕を伸ばし、彼の額にかかっている髪を除ける。現れた額に、口づける。
 何か、楽しい夢を見ているのだろうか。彼の唇が僅かに動く。そして、ふ、と笑み見せた。
「ねぇ、リョーマ。その夢の中に僕は出演してるの?」
 問いかけてみるけど。彼からの返事は無論、ない。
 僕は毛布に手を潜らせると、彼の手に触れた。探るようにして指先を動かすと、彼は自分から指を絡めてきてくれた。
 眼を瞑り、彼と呼吸を合わせる。なんとなく、こうすれば同じ夢を見れそうな気がして…。
 だけど、こんなことをしても同じ夢なんて見られるはずもない。僕と彼は所詮は他人同士なのだから。
 それでも、と思う。
 それでも。例え他人同士でも。いや、他人だからこそ、伝わるものっていうのがきっとあるはずなんだ。
「好きだよ」
 呟いて、唇を重ねる。
「………うん。」
 寝言なのかわからないけど。彼は僕の手を強く握ると、口元を緩ませた。





清い関係。
家族を大切にするのは当たり前(?)だけど、
他人にそういう感情を持つのは、やっぱり特別だから。

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