もぞもぞと、触れてくる柔らかさに目を覚ました。でも。目を開けたはずなのに、視界は白くて。僕は気だるい体をゆっくりと起こした。
「カルピン」
 名前を呼ぶ。見下ろす僕と目が合うと、彼は尻尾を振りながら、ほぁら、と鳴いた。無邪気なその姿に、笑みが零れる。そして、その先の寝顔にも。
「カルピン。良い子だから、ちょっと退いてくれないかな。今日は特別。僕が君のご主人様を起こしたいんだ」
 喉をひと撫でして言う。彼は小さな声で鳴くと、音を立てないようにベッドから降りてくれた。ありがとう、ベッドの下で丸まった彼に呟く。
「さて、と」
 僕の腕の先で、背を向けるようにして眠っているリョーマに視線を移した。朝陽に照らされている肩に残っている痣が、昨日の出来事が嘘じゃないと僕に教えてくれる。それが妙に嬉しくて。僕は彼を抱きしめると、その痣に唇を落とした。
「……ん」
 腕の中で、彼が身じろぐ。僕は腕を離すと、少し強引に彼を自分の方へと向けた。彼の目が、ゆっくりと開く。
「おはよ、リョーマ」
「ん?ああ。おは――」
 言いかけて、止まった。眠そうな目を何度もこすり僕を凝視すると、彼は開けっ放しだった口を閉じた。途端に、顔が耳まで朱に染まっていく。それは朝陽に照らされていても判るほどだった。思わず、クスクスと笑いが漏れる。それを見た彼が、赤い顔のまま頬を膨らせた。
「……ようございます」
 中断された言葉の続きを言うと、赤くなった顔を隠すように僕の胸に額をあてた。動いたことで痛みが走ったのか、彼は小さく声を漏らした。
「大丈夫?」
 髪に唇を当て、訊く。しがみつくように僕の背に腕を回すと、彼は僅かに頭を横に振った。
「……大丈夫、じゃないっスよ。無茶苦茶だ。痕まで付けて。今日、部活なくて良かったっスよ、ホント」
 怒ってるのか照れてるのか判らない口調。僕は、ごめん、と呟くと、柔らかいその髪を梳くようにして撫でた。僕の胸で、彼が微笑う。
「でも、夢じゃないんスよね。この痕も、痛みも」
 爪を立てるように、強く抱きしめてくる。僕も微笑うと強く彼を抱きしめた。
「夢じゃないよ。この温もりも」
 手を緩め、少しだけ彼と距離を置く。
「……先輩?」
「周助でいいよ、リョーマ」
 頬に触れ、キスを交わす。唇を離した彼は、しゅうすけ、と呟くと真っ赤な顔で微笑った。





365のお題でコメントまで書いてくださったのですが。一位ではなかったので書けませんでした。
『はじめての日』ってやつです。
そんなわけで、書いてみた。短くてスミマセン。まあ、お題用の話なんでね。
……ところで。カルピンって、オス?メス?

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