冷たいシーツに押し付けられる瞬間が、一番嫌い。
「周助。寒い…」
独りで眠る時の、あの淋しさを思い出すから。だから、嫌い。
「直ぐに暖かくなるよ」
クスリと微笑って、俺を抱き締めると、周助は額に唇を落とした。その背に腕を回し、離れないよう強く抱きしめる。
夏でも、俺の部屋は何故か寒い。多分、日当たりの所為だと思うんだけど。別に、今まではそれをなんとも思わなかった。それが普通だと思ってたし、寒いのだって嫌いじゃなかったから。
でも、今はもう駄目だ。先輩の、周助の温もりを知ってしまったから。
「好き」
「うん。僕も好きだよ。リョーマの事」
耳元で、囁くようにして言う。唇にキスをすると、俺の腕を体から剥がした。背中に戻ってくる、冷たさ。
「ヤダ。離さないで」
それが嫌だから。俺はまた周助に腕を回すと、強く抱きしめた。クスクスと、耳元に微笑い声が響く。
「我侭だなぁ、リョーマは」
呟くと、周助は俺との位置を入れ替えた。これなら平気でしょう?微笑いながら、オレを強く抱きしめる。
「でも、シーツが温まるまでだよ」
「…何で?」
「何か変な感じ、しない?」
キスをして、体を離す。
見上げる周助と、見下ろす俺。
確かに、少し変な気がする。でも、変な気がするだけで、悪い気はしない。それに。
「慣れないと。寒いのはヤダ」
「じゃあ。脱がせて?」
「……え?」
意地の悪い笑みを見せると、周助は俺の手を取りシャツのボタンの上に置いた。あとは僕のを外すだけだし。肌蹴ている俺の胸を撫でる。
「えーっと………っぁ」
ボタンに手を置いたまま動けないでいるのをいいことに、周助の手が、容赦なく俺に触れてきた。
「っから、こんなことしてたら。外せなっ…」
「いいよ。そんな事しなくて」
「んっ…」
抱き寄せてキスをすると、周助はそのまま位置を入れ替えた。もう、背中は冷たくない。伝わってくるのは、周助の体温、だ。
「やっぱり、この眺めの方が好きだな。ね。リョーマもそう思うでしょう?」
見下ろす周助に、俺は小さく首を横に振った。
「……リョーマ?」
「眺めはどーでも良いけど」
でもこの方が、全身で周助の体温を感じられるから、好き。
周助の温もりを感じられるシーツから体を離すのが嫌で。俺は呟くと、周助を抱き寄せてキスをした。
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