たそがれ


「駄目だよ」
 ブラインドを開けて夕暮れを確認しようとしたオレの手を取ると、先輩は微笑った。背後からオレを包むようにして抱き締める。かと思うと、そのままオレを抱きかかえ、ベッドに座った。必然と、オレは先輩の膝に座るカタチになる。
「時間、気になる?」
「別に。今日は泊まる気だし」
 薄暗い部屋。先輩はオレの耳元でクスリと微笑うと、身体を倒した。腕を回されたままだから、オレも一緒に後ろに倒れる。違うのは、先輩の下にはベッドがあり、オレの下には先輩がいるということ。
 そのまま暫く天上を眺めていると、いつの間にか、その色が暗くなった。
 不思議だと思う。夜明けははっきりとしてるのに、夕暮れは境界線が曖昧で。気がつけば、夜になってしまっている。どう頑張っても、オレはその境界を見ることが出来ない。
「太陽、沈んだ?」
「……多分ね」
 オレの呟きに頷くと、先輩は腕を離した。オレは急いで窓に立つと、ブラインドを開けた。
 何処にも、朱色は見当たらない。真っ暗だ。
「ちぇっ」
 また、見逃した。
 言葉に出さなくても、先輩はオレの考えてることなんて理解ってるから。残念だったね、と微笑った。
 溜息を吐き、ブラインドを閉める。真っ暗になった部屋。オレは先輩の笑い声だけを頼りに、その膝に戻った。
「何でいつもアンタは邪魔するんすか?」
「嫌なら、抵抗すれば良いのに」
「………」
 微笑いながら指を絡めてくる先輩に、オレは何も答えられなかった。そう言えば、オレ、いつも先輩に邪魔されるのに、抵抗なんてしたこと無かったっけ。
「なんてね。抵抗しても、君に夕陽は浴びさせないけど」
 無言でいるオレに、先輩は楽しそうに言うと、カラダをねじってオレをベッドに押し付けた。
 ようやく暗さに慣れた眼に、蒼い色だけが妖しく光って映る。
「知ってる?朝陽や夕陽には、体内時計を修正させる働きがあるんだって」
「……それが?」
「だからね。夕陽を浴びると眠たくなっちゃうってわけ。これ、どういう意味だかわかるよね?」
 言って、先輩はオレの頬に触れると、キスをしてきた。頬にあった温もりが、もっと下へと滑り込んでくる。
「リョーマの体内時計は、僕が修正してあげるよ」
 蒼い眼を細めて微笑うと、熱くなった吐息を飲み込むように先輩はまたキスをした。





365題でね、書いてるうちにコメントとは違うなって思って。
とりあえず、書き終えてからこっちにうつしてみました。
365題は別なのやつで。もっと短いと思います。(まだ書いてませんι)
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