wish


 時計の針を見ながらのカウントダウン。ゼロというかわりに、キスを交わす。そうして俺を強く抱き締めると、良かった、と周助は呟いた。
「何が?」
 周助の呟きに、その胸から顔を上げると、訊いた。俺を見つめ、優しく微笑う。
「リョーマの誕生日の前日が、休みでさ」
 お蔭で、こうして誰よりも早くおめでとうをあげられる。言うと、周助は額にかかっている髪の上に、唇を落とした。
「誕生日、おめでとう」
 低く、胸の奥まで響く声。見つめられて、俺は顔を赤くしてしまった。今更なのかもしれないけれど、それでもやっぱり恥ずかしいから。その胸に顔を埋める。
「リョーマ、くすぐったいよ」
 周助の胸に額を押し付ける俺に、微笑いながら言うと、顔を引き剥がされた。覗き込むようにして、もう一度、触れるだけのキスをしてくる。
「そうだ。プレゼント。何がいい?」
 色々考えたんだけど、これといって思い浮かばなくて。そう言って俺の額に自分の額を合わせると、苦笑した。
「誕生日とクリスマスの両方だから。多少の無茶なら、聞いてあげるよ」
 何がいい?俺を強く抱き締めて、耳元で囁くようにして言う。かかる吐息に、俺はまた顔が赤くなった。見られたくなくて。俺も周助を強く抱き締めた。ぴったりと体をくっつけ、耳元に唇を寄せる。
 23、24日は、俺と一緒に居てくれるけど。明日になれば、周助は帰ってしまう。これは、周助の家が行事などにやたらうるさいからで。弟くんも強制参加らしい。そうなんだ。周助は、クリスマスを俺とじゃなく弟くんと過ごすんだ。この先、ずっとじゃなくても、暫くは。
 だから…。
「だったら。イヴだけじゃなくて、明日もオレと一緒にいてください」
 断られることくらい分かってるけど。俺はそう願わずにはいられなかった。だから、いてください、ともう一度呟くと、その体をもっとぎゅっと抱き締めた。離れたくないんだって、気持ちを込めて。
 暫くの沈黙のあと、俺の背から、温もりが消えた。触れていた胸も、隙間が出来る。恐る恐る見つめると、周助は、優しく微笑っていた。
「いいよ。明日といわず、幾らでも。リョーマが飽きるまで一緒に居てあげる」
 それがリョーマの、望みなら。笑顔のまま、唇が重なる。
 本当に?と訊くと、本当に、とはっきりとした言葉が返ってきた。嬉しくて。今度は俺からキスをした。そのまま体の位置を入れ替える。
「でも、そんなこと言って。後悔しても知りませんよ?」
 見下ろして。不敵な笑みを浮かべると、俺は言った。そのことに、周助が不思議そうな顔をする。
「だってきっと。俺は一生、飽きることはないから。他のことに飽きても。周助にだけは、飽きないから」
 だから。俺の飽きるまでなんて言ったら、一生一緒に居ることになるんスよ?クスクスと微笑いながら。少し、意地の悪い口調で言う。けれど。周助は俺の予想に反して、嬉しそうな顔をした。
「リョーマと一緒に居られるなんて。それじゃ、まるで。僕がプレゼントを貰うみたいだ」
 本当に、嬉しそうに言うから。
「リョーマ?」
「……何でもないっスよ」
 投げやり気味に言うと、俺は赤い顔のまま周助を見つめ、微笑った。





BGMに『angel song -イヴの鐘-』を聴きながらだったので、こんな雰囲気になりました。
アタシはトミーよりもブリグリの方が好きです。(どうでもいい)
不二家はね、行事にうるさいの。七夕もやるし、節分には太巻き(だっけ?)だって食べるよ。
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