It's wonderful feeling


「ほぁら」
「……ん。わかったって。今、起きるから」
 眠い眼をこすりながら、俺は胸の上に居る目覚ましに言った。布団の中で伸びをし、勢い良く体を起こす。
「ほぁらぁっ」
 いきなり俺が起きたせいで、目覚ましがベッドから落ちそうになってしまった。
「ごめんごめん」
 苦笑し、必死で布団にしがみついているカルピンを抱き上げる。こいつは、そこらへんの目覚ましよりもずっと強力で。いつも俺が寝坊をしないように、起こしてくれる。
 ただ。
「目覚まし。鳴るまで寝かせといてくんない?」
 俺が目覚まし時計をセットした時間よりも早く起こしてしまうのが難点。
「ゲームやってて、あんま寝てないんだよ。カルピンも知ってんだろ」
 大きな欠伸をしながら、言う。
「ほぁら!」
 ……怒られた。と、カルピンはまだ鳴っていない目覚まし時計の隣に移動した。
「…何?」
 時間を見ろ、とでも言いたげな視線。何だか、すっごく嫌な予感がする。カルがこうやって怒ってるときは、大抵…。
「遅刻じゃん!」
 何で鳴らないんだよ、この目覚まし。
「ってか、解かってんだったら、もっと早く起こせよな」
「ほぁら」
 しかりつける俺を無視してベッドから降りると、カルピンはそのままドアの方へと向かっていった。そのカルを抱き上げる、白く細い腕。…って。
「―――え?」
「駄目だよ。自分の寝坊をカルピンのせいにしちゃ」
 見上げた俺に笑顔を見せると、先輩はカルにキスをした。
「おはよ、リョーマ」
 カルを抱きかかえたまま、先輩は部屋に入るとベッドに腰を下ろした。膝の上に、カルを乗せる。
「……なん、で。アンタがここにいんの?」
「んー」
 呟きながら俺の頬に手を当てると、先輩は触れるだけのキスをしてきた。俺を見つめ、クスリと微笑う。
「あんまりリョーマが遅いから。迎えに来たんだよ。そしたら、南ちゃんが家に上げてくれたの」
「……あのくそオヤジっ」
「あ、そうそう。でね、南ちゃんが、もう少ししたら家にはリョーマ以外誰も居なくなるから、今日1日、自由に使っていいってさ」
「…にゃろう」
 あのくそオヤジが俺と先輩の関係をどこまで知ってるのか、解からない。だけど、薄々感づいてはいたと思う。オヤジが家にいるのに、この部屋でしたこともあるし。
 だからって…。
「どうする?テニス場へ行く予定だったけど。南ちゃんから許しも出たことだし。予定、変更する?」
 意味深な笑み。先輩の手が、俺の頬を撫でる。よく見ると、蒼い眼が、しっかりと俺を見つめている。
 …こういうときの先輩は、ろくなこと考えてない。
「嫌っスよ。俺がどんだけこの日を楽しみにしてたか、アンタ知ってんでしょ?」
 久しぶりの、先輩との試合。邪魔者(ギャラリー)抜きでの、真剣勝負。
「知ってるよ。寝坊しちゃうくらいに、でしょ?」
 先輩はクスリと微笑うと、反論できずにいる俺にキスをした。今度は、深く重ねてくる。
「ね。勝負は今度にしようよ」
 俺の体を倒し、またキスをする。寝起きであるせいなのか、俺の体は簡単に熱を持ってしまった。
 ……このままだと、やばい。だけど。別にこれが嫌だってワケでもないから、拒否は出来ない。
「…じ、じゃあ。賭け、しましょうよ」
 何とか先輩を引き剥がし、俺は深呼吸をした。つまらなそうな表情の先輩を、見つめる。
「今回は俺が寝坊したせいもあるんで。うちのコートで我慢しますから」
「………」
「………」
「……いいよ。じゃあ、僕が勝ったらこの続きをするってことでいいのかな?」
 頬に手を当て、キスをしようとする。俺は先輩の頭を押し退けると、頷いた。
「解かったんだったら、退いてください。俺、着替えなきゃなんないんで」
「…はいはい」
 大人のような言い方。先輩は溜息混じりに呟くと、足元でうずくまっていたカルピンを抱き上げた。椅子に座り、俺を見つめる。その膝の上で、満足そうに喉を鳴らすカルに、俺は少しだけイラついた。
「………そうだ」
 そんな俺の気持ちを見透かすかのように、先輩がクスリと微笑う。
「な、なんすか?」
 俺は慌ててカルから眼をそらすと、ベッドから降りた。先輩に顔を見られないように、箪笥から服を取りだす。
「リョーマが勝ったら、どうするの?」
「………」
「リョーマ?」
「……今日1日」
「うん」
「今日1日、この部屋でずっと俺の傍に居てもらいます」
「―――え?」
「居てもらいます」





掘り出し物。書いたのは去年(2004年)の1月だそうで。
何でパソコンに眠っていたかは不明。この話、他のところ(お題とか)でアップしてないですよね?
もししてたら、教えてください(笑)
タイトルはRAMJET PULLEYの曲から。
文体が古い。
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