「はい、どうぞ」
「………何だ？」
「何だって。カーネーションですよ。今日、母の日ですから」
「だから、それを何故あたしによこすんだい？あたしゃお前さんの母親じゃないよ」
「そうですけど。何かないと、貴女は僕からのプレゼントを貰ってくれませんから」
「あっても、貰わんぞ。こういうのは、自分の母親にやらんか」
「ああ。それなら既に手配してありますから」
「手配？」
「今日、一日中部活ですからね。昼に届くよう、花キューピットに頼んであります。なので、竜崎先生が受け取ってくれないと、僕はそれ、捨てるはめになっちゃうんですよね」
「何も、捨てんでも。お前からのプレゼントなら、欲しい奴は五万といるだろう」
「居ても、僕があげる気ないですから。ま、とりあえず、貰ってください。あ、あとこれも」
「……チョコレート？」
「お嫌いですか？」
「嫌いじゃないが。何故チョコなんだ？」
「知りません？CMでやってるんですよ。母の日にチョコを送りましょう、みたいなの」
「その企業の戦略にまんまとはまったというわけか」
「はまりにいったって言うほうが正しい気がしますけどね」
「？」
「あ。お返しはチョコでいいですよ。ほら、あるじゃないですか、そういう日が」
「………お前。そっちが目当てか」
「あはは。なんなら、こどもの日でもいいですよ」
「こどもの日って。もう過ぎただろうが。何を言っとる」
「え？来年の話ですよ。来年の、こどもの日」
「来年は卒業しとるだろうが」
「竜崎先生が僕にプレゼントくれるって言うなら、来てもいいですよ」
「やらんから来んでいい。あたしゃ見返りを求める奴は嫌いだよ」
「じゃ、要らないです」
「は？」
「要らないです。けど、来ますから。来年のこどもの日」
「…………」
「嬉しいですか？なんだったら、毎日来てもいいですよ」
「…………」
「あ。手塚が来た。じゃあ、部活始まるみたいなんで、先、行ってますね」
「……って。おい、不二！」