帰途


「いいのか?あいつら放っておいて」
「構いません。それに、今回の主役はスミレちゃ…」
「不二」
「…竜崎先生、なんですから。貴女が帰る時点で、終了です。あとは各自の責任。まぁ、片付けくらいはしに戻りますけどね。これでも、発起人なんで」
「……ありがとう」
「え?何か言いました?」
「い、いいや。それにしても、今年に限ってどうしたんだい?一体。去年も一昨年も、誕生会なぞ開かなかっただろう」
「そりゃ、先輩がいましたからね。僕たちだけで勝手に何かをやることは出来ませんし」
「なるほど」
「それに…。去年までは全国まで行けなかったじゃないですか。今の時期、部活も夏休みで。そんな中、顧問のことまで考える生徒さんというのも、なかなかいないと思いますよ」
「そういえば、そうだな。私の覚えている限りでも、この時期に部活があるのは久しぶりだよ」
「それでも。僕だったら、きっと企画してましたけどね。部活、無くても」
「ほぅ。たいした自信だな」
「好きなヒトの誕生日を気にしないほうが可笑しいと思いますけどね」
「……はぁ。まだそんなくだらん嘘を…」
「嘘って決め付けるのって、非道いと思いますよ。こう見えても、結構本気なんですから」
「いまいち、お前の言葉は、な」
「信じられません?」
「私はお前を信頼しておる。だからこそ、お前のその発言は信じられんのだ」
「……何ですか、それ」
「兎に角、だな」
「でも、去年も、一昨年も。僕からの暑中お見舞い、誕生日に届いてませんか?」
「なぬ?」
「多分、今日も。家に帰れば届いてると思いますよ、HAPPY BIRTHDAYとは書いてませんけどね」
「………不二、お前…」
「結構本気なんだって、言ったじゃないですか」
「ったく。その本気を少しでもいいからテニスに向けてはくれると、助かるのだがね」
「僕は本気になろうと思ってなれるニンゲンではないですからね。そこらへんは、諦めてください」
「ならば、私が本気になるしかないんだろうね」
「……え?」
「お前の本気を引き出すことに、だよ」
「だから、僕は本気で…」
「テニスの話だ。馬鹿者」
「……なんだ。残念。…あ。じゃあ、僕はここらへんで戻りますね。お気をつけて。それじゃあ、また明日」
「お、おお。明日、遅刻するんじゃないよ」
「はい」
「……っと。全く、何を期待しとるんだかね。あの子は」





不二はよく逃げますね(笑)。
スミレちゃんのお誕生会。会場は勿論、河村寿司。
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