Cake
 今年こそは、ケーキを作ってあげようと思った。
 不二のお姉さんもお母さんもお菓子作りが得意だから、去年も一昨年もオレはバースデーケーキに見立てたちらし寿司を不二の家に届けていた。
 ケーキが二つもあったら困るだろ、と不二には言ってたけど。本当は違う。いつもスポンジがうまくいかなくて。それで、仕方なくちらし寿司にしてただけだ。
 それでも、オレの言葉を疑わない不二は、嬉しそうにちらし寿司を受け取ってくれてた。その笑顔が、どうしても、オレの胸には痛かった。
 でもだからと言って、不二に本当のことは言えない。スポンジが焦げたとか生だったとか、多分どんな理由で失敗したにしろ、無理矢理にでも全部食べてしまうと思う。不二は、そういう人なんだ。
「タカさん。今年もちらし寿司、楽しみにしてるから」
「えっ、あ、うん」
 ケーキのデコレーションをあれこれ考えながら歩いていたオレは、突然の不二の声に驚きながらも、思わず頷いてしまっていた。
 どうしよう、今年こそは、ちらし寿司じゃなく、ケーキをあげたいのに。
「あの、さ。不二」
 今年は、多分ちらし寿司はあげられないんだ。そう言おうとしたけど、ちょっと待てよ、とオレは思った。
 別に、ケーキかちらし寿司のどちらかを選ばなくちゃいけないなんて決まりはない。
「どうしたの?タカさん」
「不二、今年の誕生日は楽しみにしててくれよ。三度目の正直。オレも、頑張るから!」
「え?三度目?何?」
「あ。いや、何でも……」
「変なタカさん」
 もごもごと口ごもったオレに、不二はクスクスと声を上げて笑った。オレの手をとって、指を絡めてくる。
「……でも、そうやって僕のために頑張ってくれるの、凄く嬉しい。誕生日、楽しみにしてるから」
 肩がぶつかるくらいに体を寄せると、不二は口元を緩めた。
「任せとけって」
 不二と目を合わせ、今度こそしっかりと頷いたオレは、その手を強く握り返した。




ちらし寿司はさもケーキのように飾りつけして不二家に配達いたします。
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