Sweet pain


「不二、大丈夫?」
 不意に掴まれる、腕。
「……何が?」
 触れられた箇所が熱くなる。少し戸惑いながらも、僕はいつもの笑顔で振り向いた。
「元気ないよ」
「そう?」
 あくまで、平静を装う。確かに、今日は少し体がだるい。部活を休もうかとも思った。けれど、部活は彼と会える貴重な時間。わざわざ自分の手で潰すなんてことは出来ない。
「大丈夫だよ」
 言って、微笑って見せる。大抵のヒトならこの顔に騙されてくれるけれど……。
「そうは見えないけど…」
 騙されてはくれないらしい。そう言えば。僕の変化にいち早く気付くのはいつも、彼。
「熱でもあるんじゃない?」
 彼は僕の額にかかる髪を手で上にあげると、僕の額に自分のそれをあてた。彼の顔が間近にあることに、変な話だけど、僕は少しだけ緊張した。
「やっぱり、熱あるよ」
 ………タカさんの所為だよ。
 声には出さず、心の中で毒づく。実際にも熱はあるんだろうけど、今の心拍数と体温の上昇は、風邪の所為でも何でもなく、目の前に居るヒトの所為。
「大丈夫だよ」
 とは言ってみるものの。額を離した僕の顔は、恐らく、誰が見ても解かるほど真っ赤。
「いーや、駄目だ。保健室行こう。オレが連れてってあげるから」
 言って腕を掴むと、彼は僕の意志を確認せずに、そのまま僕を保健室へと連れて行った。

「……38度5分だって」
 保健室のベッドの中。体温計を見せると、僕は微笑った。まさかここまで熱が出てたなんて思いもしなかった。そうまでしてでも彼に会いたかったのかと思うと、滑稽に思えて仕方がなかった。だから、微笑った。なのに。彼ときたら、そんな僕とは対照的に、口を閉じたままで沈んでいる。まるで彼の方が病人みたいに。
「タカさん、どうしたの?」
 その顔を覗き込もうと、僕は上半身を起こそうとした。けれど、それは彼によってすぐに止められた。
「不二、ごめんな」
 僕の身体に毛布を掛けながら、彼が言った。思いもしなかった言葉に、僕は戸惑った。
「………何、で。タカさんが謝るの?」
「オレがもっと早く不二の異変に気付いてれば…」
 落ち込んでいく声。何とか元気を出してもらおうと、僕が勝手に夏風邪をひいただけだから、と言って微笑ってみせた。けど。
「だからだよ」
 それだけ。彼は溜息を吐きながら言うと、そのまま黙ってしまった。

 静寂。時計の秒針が余計に静けさを際立てる。
 僕はどうしていいのか解からなかった。彼の言った言葉の意味が、未だに掴めない。

 どれくらい経っただろうか。突然、彼が立ち上がった。
「…タカさん?」
「暑くないか?」
 言うと、彼は窓を開けた。カーテンの隙間から心地いい風と運動部の声が入ってくる。僕はその風をもっと受けようと、上半身を起こした。
「不二は無理し過ぎだよ」
「……そう…か、な?」
「そうだよ。」
 突然言われた言葉に、少し、ドキリとした。無理してる、なんて。今まで誰にも言われたことなかったのに。
「そうやっていつも笑ってるけど。本当は辛かったりするんだろ?」
「………。」
「オレにくらい、甘えてくれてもいいのに」
「………。」
「………不二。泣いて、るの?」
「え?」
 言われて、初めて自分の頬を伝う涙の感触に気が付いた。
「あれ?どうしたんだろ。熱の所為、かな?」
 慌てて涙をふき取る。自分でも笑ってしまうような酷い言い訳にも、彼は、そうだね、と言って微笑ってくれた。その優しさが、いっそう僕の涙を煽る。震える肩に、彼はそっと手を置いた。
「オレ、不二には無理して欲しくないんだ」
 眼を見つめ、少し、照れたように彼が言う。
「………僕には、タカさんのほうが無理してるように思えるけどな」
 僕を庇って波動球受けたのは誰だっけ?といって、僕は微笑った。つられてか、彼も微笑う。
 まだ、涙は頬を伝っているけれど。こういう雰囲気、悪くないな。たまには甘えてみるのもいいかもしれない。
 僕は深呼吸をすると、涙を拭った。
「……ねぇ、タカさん」
 肩に置かれた手を捕ると、どうした、と彼が顔を覗き込んで来た。そのタイミングで。僕は彼の首に腕を回した。
「なっ、なんだよ、不二」
「知ってる?風邪ってさ。ヒトに移すと治るんだって」
 言って、僕は口付けをすると、たじろぐ彼をそのままベッドに組み敷いた。
「……不二?」
 僕の下で凍り付いている彼に、僕はいつものように微笑った。
「甘えても、いいんでしょ?」





また、風邪ネタですな。すんまそん。。。
不二タカって、マイナーなんですか?アタシの中では結構メジャーなんですけどι
このカップリングは、不二が陰を落とさないので、幸せなのが書けるのですが、
白(?)不二なので、書きづらいです(笑)
いや〜、不二くんは白でも黒でも灰色でも好きなんですけどね。
書き易いのは、黒不二なんですよ。(←最低)
でも、タカさん相手じゃ、黒はなぁ〜。 ってか、これも、黒なんですか?アタシ的には白不二なんですけど。。。

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