幸せな時間


「う〜っ、寒いっ!」
 帰り道、足早にオレの元へと近寄ると、不二はそのままオレの手を握った。
「お、おい」
 周囲に人は居ないかと、オレは思わずキョロキョロしてしまう。
「タカさん、なに慌ててんのっ」
 可愛い、と誰よりも可愛い顔で微笑うと、握ったままの手をオレのコートのポケットへと突っ込んだ。
「大丈夫。誰も見てないって。といより、僕は誰かに見られた方が良いんだけどね。そうすれば、君に悪い虫がつかなくて済むでしょ?」
「ふ、不二っ」
「あはははは。冗談だよ」
 慌てふためくオレを見て楽しそうに笑うと、腕を掴み、体重を預けてくる。
「ちょっ、ちょっと、不二っ」
「いいじゃない。あと少しなんだからさ、甘えさせてよ」
 強請るようにして擦り寄ってくる不二に、オレは溜息を吐いた。あと少し、という言葉が、嫌に胸に響く。
 そうだ。あと少ししか、不二と一緒には居られない。幾らここが付属の中学とはいえ、そのまま高校へ進学する奴らばかりじゃない。不二はテニスを続けるから、このまま進学するんだろうけど…。オレは、店を継がなきゃならないからな。
「……タカさん?」
 呼ばれて振り向くと、不二が不安そうな顔をしてオレを見つめていた。人の痛みに酷く敏感な不二のことだ。何か、勘付いたのかもしれない。不安にさせるつもりじゃなかったのにな。
「ううん。何でもない」
 言うと、オレは笑顔をつくって見せた。
「ホントに?」
「本当だよ。何でもない」
 オレの笑顔に、少しだけ不満そうな顔をしていたが、そっか、と呟くと不二も微笑った。
「優しいね、タカさん」
 クスクスと微笑いを溢すと、オレの腕に擦り寄ってきた。空いているほうの手で、2,3度、不二の頭を叩いてやる。
 こんな時間が、長く続けばいいと思う。
「大丈夫だよ、タカさん。僕は、ずっとタカさんのこと、好きだから。ずっと、ずっと、一緒だよ」
「………。」
「ねっ」
「………。……敵わないな、不二には」
 オレのココロを見抜いたような不二の言葉に、苦笑しながら言った。そのオレの言葉に、今度は不二が笑みを溢す。
 幸せな時間。決して永遠じゃないって解かってる。けど、それでも、いいんじゃないかって、思えてくる。今、不二と一緒に居ることが出来るなら。
 オレは深呼吸をひとつすると、ポケットの中の不二の手をぎゅっと握り締めた。どうしたの?と見つめる不二に、笑顔で返す。
「不二。寒いから、早く家に行こっか。……ところで、今日は何の勉強をするんだい?」
「そうだね。じゃあ、僕が得意な古典を――」





以前にTVで見たことがあるんだけどサ、御店とか継ぐヒトって、
特に、料理人の場合、高校行かなかいで修行することもあるらしい、と。
タカさん、これでテニスは最後だって言ってたし。もしかしたら高校行かないのかな?
タカさんと居ると、不二は白くなります。だって、タカさん、優しいから

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