Run up


「悪いね、不二」
 薬を塗り終えると、彼は僕の顔をすまなそうに見て呟いた。その優しさに、思わず笑みが零れる。僕は薬箱から包帯を取り出すと、開かれた彼の右手に丁寧に巻きはじめる。
「僕はタカさんの恋人なんだから、これくらいやって当然なの。ね。」
「え…あ、うん。」
 顔を紅くし、小さく頷く。可愛い。この姿を見てるだけで、夏の暑さなんて一気に吹き飛んでしまう。
「よしっと。はい、お仕舞い」
 言って、僕は彼の手を軽く叩いた。彼はその痛みに少しだけ顔を歪める。それを見て、僕はまた微笑った。
「…笑うなよ。ホントに痛かったんだから」
 手をさすりながら、困ったように彼が言う。
「ごめん、ごめん」
 言いながら、僕はその手を捕ると、包帯の上に唇を落とした。
「……不二?」
「早く良くなるオマジナイ」
 もう一度、今度は音をたててその手に口付ける。瞬間、彼の手が微かに震えた。緊張してるのか、それとも意識してるのか…。
 手を握ったままで、僕は顔を上げた。彼を見る。
「な、なんだよ」
「顔、紅いよ?もしかして、照れたの?」
「ふ、不二がそんな事するからだよ」
 顔を耳まで真っ赤にして言うと、僕の手えを振り払おうとした。逃げようとするその手を引き寄せ、彼を抱きしめる。
「不二!?」
「大丈夫。誰も見てないよ。ここは僕の秘密の練習場なんだから」
 耳元で、クスリと微笑って見せる。
 彼が観念してカラダの力を抜くと、僕は腕を離した。彼をきちんとベンチに座らせ、密着するようにして、僕も座りなおす。
 もう一度、彼の右手を捕る。
「ほんと、悪いね。おれの練習なんかに付き合わせちゃって。不二だって自分の練習があるはずなのに」
 僕の手を握り、しぼんだ声を出す。別に、僕が好きでやってることなんだから気にする事ないのに。それでもきっと気にしないではいられないんだろうな。それが彼の優しさであって、僕はそんな所に惚れたんだけど。
「僕の方は一段落ついてるから」
 僕が微笑うと、彼は安心したように溜息をついた。
「それならいいんだけど。……そっか。不二は一段楽したんだ。おれも頑張らなきゃな。次の相手はなんたってあの氷帝だからね。アレ、早く仕上げないと」
 彼は僕から手を離すと、血塗れになった自分のラケットを手にとった。流石に、手が痛むらしい。ラケットを握り締める度、彼の顔が苦痛に歪むのが解かる。
「僕は、心配だよ。タカさんが」
 呟くと、僕は彼の手からラケットを取り上げた。それを追おうとした彼の手を捕る。
「タカさん。頑張るのもいいけど、それで怪我しちゃったら元も子もないからね?」
 ラケットに付いていた血が付いたのか、それとも手を動かしたことで血が滲んできてしまったのか。彼の包帯には、薄っすらと緋い色が見える。
「解かってるよ。心配するなって。おれはこんな所で終わらないよ」
 言うと、彼は右手を宙に掲げた。
「最後はやっぱり、全国制覇で締めないとな」
 決意を掴むように、彼はその手をぎゅっと握り締めた。
「なんてね。」
 僕の手の上に、拳を下ろすと、彼は照れ笑いを見せた。それが凄くいとおしく思えて。僕は彼に口付けをした。
「不二…。」
「そうだね」
 僕が微笑うと、彼は再び耳まで真っ赤に染めた。





タカさんの新技の存在を不二だけが知っていたことから、
きっと二人は一緒に練習していたんだろうな、と。
なんか、久しぶりに原作にそった話だなー、なんて思ってみたり(笑)
あー。タイトルテキトーなのがバレバレだぁ。
♪We can run up! 握りしめ〜た手ぇ〜の平に〜っ 僕た〜ちは守り抜くべきものをもう一度強く握り締めよう!♪
はい。愛内里菜でした。

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