CAT


「不二ってさ、猫みたいだよな」
 おれの部屋。ゲームをしているおれに覆い被さるようにしている不二を横目で見た。
「……何?」
 相変わらず、おれの頬にピッタリとくっついたまま、離れない。慣れたからいいけど、最初は凄く動き辛かったんだよな、重いし。不二曰く、タカさんの背中は僕だけのもの、らしい。
「だからさ、不二って、猫みたいだよなって思ってさ」
 視線をTV画面に戻しながら言った。不二もそれに合わせて視線をTVに移す。
「そうかな」
「そうだよ。自分で気付いてないの?」
おれの問いかけに微笑いながら、うん、と頷く。その動作が妙にくすぐったくて。何故か、少しだけ顔が赤くなってしまった。
「何処らへんが猫なの?」
「う〜ん、そうだな…」
 ゲームの手を止め、暫く考えてみる。猫みたいだとは思うけど、どこらへんがって言われると、なかなかいい言葉が浮かんでこない。
 云々と唸っているおれを見て、不二が困った顔をしながら溜息を吐いた。
「猫っぽいってさ。英二っぽいってこと?」
 …嫌なのか?と聞きたくなるような顔をしてみせる不二に、おれは笑い声をあげた。
「…何が可笑しいの?」
「ごめんごめん。確かに、英二は猫っぽいけど。不二はそう言うんじゃないんだよ。ほら、英二って、どっちかって言うと、甘えん坊でやんちゃな子猫って感じだろ?不二はなんていうか…」
 掴めそうで掴めない、そんな魅力を持つ、大人の猫。そう。多分、それ。こっちが構おうと差し出した手はあっさりと無視をするくせに、自分が甘えたい時はこっちの事情はお構いなし。それでも、離れられないおれが悪いといわれれば、それまでなんだけど。…そう言えば、そんな物語、誰かの曲で在ったっけ。あれは、誰の歌?
「なんていうか、何?」
「え?あ、うん。ううん。なんでもないよ。忘れちゃった」
 気がつくと目の前にあった不二の顔に、おれは慌てた。
「忘れたってことは無いでしょ?ねえ、僕のどこが猫っぽいの?」
 そういうところだよ。なんて、言えるはず無い。もちろん、さっきまで考えていたことも。恥ずかしいしな。
「ねぇってば」
 不二に迫られるような形になって、おれはたじろいだ。どうしよう。このまま話を逸らすことなんて出来っこない…。
「だから、ほら。大人の猫ってことだよ。落ち着きの在る、さ」
 これじゃあ、ダメ?という目で、おれは多分、不二を見てるだろう。だから、当然、不二にはそれが嘘だって言うのはバレてると思うんだけど。
「そっか。大人の猫、ね」
 不二は微笑いながら、ひとりごちた。それを見て、おれはほっと胸を撫で下ろした。のも、束の間。
「大人ね。お・と・な…」
 そう何度も呟きながら、おれを見下ろしている不二の、その笑顔の意味を知った時、おれの背筋は一瞬にして凍りついた。



B'zで。
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送