想いを声に...




 いつから会話をするようになったのだろう。
 いつから並んで歩くようになったのだろう。
 いつから触れ合うようになったのだろう。


 切欠は多分、総て僕からで。だから余計に解からなくなるんだ。





 世界が朱に染まる帰り道。
 僕たちは当たり前の様に手を繋ぎ、並んで歩く。



「ねぇ、手塚」
「……なんだ?」




 ――どうして君は、僕の隣に居てくれるの?




 ココロの中で呟いてみる。
 勿論、彼に聴こえる筈がない。



「どうかしたのか?」


 立ち止まったまま何も言い出さない僕に、彼が心配そうな声で言った。
 顔を覗き込んでくる。
 何にも知らない声。何にも知らない顔。
 何にも知らない、キミ。


「うーん。何言おうとしてたか忘れちゃった。だから、いいや」
「そうか」
「ごめんね」
「別に構わん。思い出したら話せ」
「うん。」



 無理矢理作った、笑顔と言い訳。
 彼は僕の手を引き、歩き出す。
 簡単に騙されてしまう彼に、自分勝手ながら、多少のショックを受けた。
 被害妄想なのは解かってる。
 何も言わない僕が悪い。



 でも。



 だからといって、何か言える筈がない。
 友情と愛情と。
 微妙なバランスの中にきっと僕たちは居るから。
 小さな風が吹いただけで、総てが壊れてしまいそうで。



 ――まあ、それも時間の問題だけど。



 ずっとこのままだと、僕の方が壊れてしまうだろう。
 そうしたら、いつか僕は…。





 キミを、壊してしまうよ。





 だから。
 そうなる前に。



「手塚。」
「思い出したのか?」


 深呼吸をして、彼を見上げる。
 繋いだ手を強く握り締めると、彼の温もりが伝わってきた。





「キミは、どうして僕の隣に居てくれるの?」





 沈黙。
 彼は足を止めると、真剣な眼で僕を見つめた。
 その問いの奥にある真意を探るような眼。
 あまりにも長すぎるその沈黙に耐え切れなくて、僕は眼をそらそうとした。


「では訊くが。お前は何故、オレの隣に居る?」


 予想外のその言葉に、僕は彼を見つめたまま動けなくなってしまった。
 ――僕は何故、彼の隣に居る?
 答えは、既に出ている。






 『僕は、キミが、好き。』






 何度、ココロの中で呟いたか知れない。
 けれど。今まで、絶対に声にはしなかった。
 だって、僕の気持ちを知ったら、きっと彼は僕を嫌いになる。
 彼に嫌われるくらいなら、今までのままの方がいい。
 そう思ってた。



 昨日までは。



 この関係は永遠のものじゃないって、知らされた。
 彼は、明日、ドイツへ行く。
 だから。
 彼が離れてしまう前に。総てを告白するんだ。


 彼に嫌われてもいい。この関係が壊れてもいい。
 このまま、彼に非道い事をしてしまうよりは。
 彼を、傷つけ、壊してしまうよりは。



 深呼吸をし、改めて、彼を見つめる。






「僕は、キミが、好き。」




 一言一言、自分の気持ちを確かめるように、言う。
 左手を彼の頬に伸ばした。右手には彼の左手。
 突然の告白に戸惑う彼に、少しだけ、胸が痛んだ。


 けれど。
 もう、後戻りは出来ないから。


 僕は爪先立ちになると、その唇に、自分のそれを重ねた。



「僕はキミが好き。だから、キミの隣にいる。」



 唇を離し、微笑って見せる。



「出来ればこれからもずっと、こうしてキミの傍に居たいって思う。
 キミさえ、良ければ」
「…………。」
「ねぇ。キミは?キミはどうして、僕の隣に居てくれるの?」
「オレは…」
「『オレは』?」
「オレも――」



 彼の右手が、僕の左手に触れた。
 瞬間、視界が暗くなる。唇に感じる、微かな温もり。
 次に視界が開けた時には、赤紫の空が広がっていた。
 彼の腕は、僕の背に。
 そして、耳元で、彼が囁く。






「オレも、お前が、好きだ」






 驚いた。夢なのかもしれないと。
 けれど。
 僕を抱きしめている彼の温もりと力強さは、幻なんかじゃない。



「………うん。」



 何にというわけではなく頷く。
 彼の言葉を反芻してみる。
 『オレも、お前が、好きだ』と。

 嬉しくて。

「うん。」


 もう一度頷くと、僕は彼を強く抱きしめた。





やってみたかった書き方。
ネットでの小説だとこういう書き方してるヒトいますよね。
言葉の配置とか、難しいです。
やっぱ、無理だわι頑張りますけどね。
別に、ドイツじゃなくてもよさげだったね(笑)

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