It's the end


「準備は出来たかい?」
「…ああ。」
「ごめんね」
「謝らなくていい。オレも詫びはしない」
「………そう」
 鎖で繋がれた彼の横たわるベッド。僕は彼の上に馬乗りになった。軋む。その音がこの部屋全体に広がり反響する。
 取り出したナイフで、彼の肌に十字を刻む。彼は苦痛に顔を歪めながらも、声を上げる事だけは防いでいた。
 だから。この部屋に響くのは、二人分の息遣いと、僅かな鉄の擦れる音だけ。
 不思議な感じ。今までどれ程かの静寂を感じた事はあっても、ここまで煩い静けさを感じた事はなかった。
 きっと、終わりを知っているから感じるのかもしれない。
 煮えたぎる憎悪の音で、他の音が聞こえない。静寂、だ。
「莫迦だね」
「…オレは、後悔などしていない」
「キミじゃないよ。僕のことさ」
 傷口に舌を這わせ、流れ出ている緋を摂り込む。口の中に広がった鉄臭い味は、僕の興奮を煽る。
「この傷、痕が残るね」
 彼の手首。無理矢理に鎖を千切ろうとしたそこは、赤く腫れ上がり、固体と化した血液がこびりついている。湿らせた舌を鎖と肌の間に滑り込ませ、赤茶けたそれがなくなるまで、何度も舐め上げる。
「傷を付けたお前が言うな。それに、どうせこの身体も意味を無くす」
 自分の身体につけられた傷に目線を移すと、彼は微笑った。
「そうだね」
 僕も、微笑い返す。
 夢にまでに見た、二人で穏やかに微笑い合うという光景。まさか、こんな所で叶うなんて。皮肉だね。
「でも。これは、傷じゃないよ。これは、キミを地獄へ堕とす為の刻印。ほら、僕にも…」
 自分のシャツを引き千切る。現れたのは、胸に緋く刻まれた十字。
「……何処までも一緒というわけか」
「僕がいないと、淋しいでしょう?」
「それはお前だろう?」
「………そうかもね」
 口付けを交わすと、額を合わせ、微笑った。
 壊れている。お互いに。
「鎖、外すよ」
「ああ」
 自由になった彼の手に、鉄の塊を渡す。僕の右手にも、それ。
「花束は、いらないよね」
「緋い花なら、すぐに咲く」
 互いのこめかみに、銃口をあてる。
「炎は。僕の嫉妬でいい?」
「………。」
「安心して。ちゃんと焼き尽くすから。キミも、僕も、想いも、総て」
「……好きにしろ」
 彼が小さく頷く。僕は引き金に指をかけた。鏡のように、彼も同じ動作をする。
「手塚。好きだよ」
「………。」
 彼は答えない。僕は口元だけで微笑うと、彼に目配せをした。
 響く、轟音。
 視界がブラックアウトする瞬間、鏡の向こうで誰かが泣いていた。





………ふ。
ラルクの曲です。
手塚の移り気っていう設定が多いなって思う今日この頃。
彼は約束を守る誠実なヒトなはずなのにネ(苦笑)

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