雨の日は余り好きじゃない。身体に纏わりつく重苦しい空気。夕立とかなら許せるけど、今日みたいないつまでも止みそうにない雨は、本当に嫌だ。機嫌だって悪くなってくる。
「……待ったか?」
「ううん」
 それでも、彼の前では自然に笑顔が出てしまう自分は、莫迦だと思う。莫迦って言っても、手塚バカだけど。
「何だ?」
 僕の視線に気付き、彼が少し顔を赤くした。何でもない、と微笑う。
「お前はいつもそれだな」
「ん?」
「『何でもない』。」
「あ。」
 彼は隠し事を嫌う。彼だって自分の肘の怪我を未だに僕に隠しているのだから、ヒトのことは言えないんだけど。
「手塚って可愛いなって思ってさ」
 別に隠すほどのことでもないし。
「ばっ…」
 彼が余計に顔を赤くして俯いてくれたりするから。僕はすんなりと彼に本当のコトを言える。
 ホント、可愛いなぁ。
「訊いたオレがバカだったよ。……帰る」
「あ。待ってよ」
 耳まで真っ赤にして、彼が歩き出す。僕も慌てて後を追った。
 雨の日は余り好きじゃない。並んで歩くけど、傘が邪魔して僕と彼のキョリはいつもよりも遠い。それに、手だって繋げない。
 あ。そうか。
「手塚。お邪魔してイイ?」
「…何だ?」
 不思議そうに彼が僕を見る。お前の言動はいつも突飛すぎる、といつも困ったようにいう彼の姿が浮かんできて、少し微笑えた。
「だから…」
 僕は傘を横に退けると、彼と腕を組んだ。自分の傘を閉じる。
「なっ…」
「こういうこと。ね?」
 突然の僕の行動に、彼は慌てて周囲を見回した。でも、こんな雨の日の夕飯時。外を歩いてるヒトなんて、僕たち以外いるはずもない。
「いいでしょ?」
 彼の腕をしっかり掴み、見上げる。
「……今日だけだからな」
 彼は溜息を吐くと、小さく微笑った。
「うん」
 頷いて、彼の肩に頬を寄せる。
「だが、手は離してくれないか?」
「え?」
 僕が理解するよりも早く、彼は強引に僕の腕を解いた。
 やっぱり恥ずかしいのかな?なんて思ったら、彼の手が伸びてきて、僕の肩を抱き寄せた。
 僕に、傘を差し出す。持てってこと?
 見上げると、彼が頷いた。彼の手から傘を受け取る。それを確認すると、彼はより強く、僕の肩を抱き寄せてきた。
「この方が濡れないだろ?」
 僕から眼をそらして言う。その彼の耳が、赤い。照れてるんだ。
「ありがと。」
 呟いた自分の頬が熱くなってることに気付き、僕は苦笑した。何を照れてるんだろ、今更。
 身長差が今まで鬱陶しくてしょうがなかったけど。こういうこと、してくれるなら別に構わないかな、なんて。ただ、キスが出来ないのが少し淋しいけど。
 黙って、歩く。共通の雨音を聴いているんだって言うだけで、なんだか幸せな気持ちになってくる。
 こうやって寄り添っていられるなら、雨の日もまんざら悪くはないみたいだ。
「好きだよ」
「……何だ?」
「ううん。何でもない」
「また、それか?」
「うん。また、それだよ」
 僕の返答に、眉間に皺を寄せる彼。それが可笑しくて、幸せで。僕は微笑った。





日記に書いた言葉を物語化してみた。
できるだけ短く、バカップルにしてみた。
投票あんけぇとではバカップルが一番人気だったしね。
不二塚ですよ。あくまで。

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