「支障が出るのなら僕を…団体戦のメンバーから外してくれ。君の、重荷にはなりたくないんだ」 どこか切なげな眼をして呟くと、オレに背を向けた。その後ろ姿が、このまま消えてしまうのではないかという錯覚を呼び起こさせるから。オレは手を伸ばすと、不二を掴まえた。強く、抱きしめる。 「……手塚?」 「どうして…」 どうしてお前は、オレと一緒に頑張ると言ってくれない? どうしてオレにすら、本当のお前を見せてくれない? それが、不二周助であると言ってしまえばそれまでなのかもしれないが。それでは、あまりにも淋しすぎる。オレは、お前と…。 「風邪、引くよ。部室、行こう?」 抱きしめたまま黙っているオレに苦笑する。不二の手が、オレの手に重なった。 「こうしていれば、温かい」 呟くと、腕を解こうとしている不二に構わず、オレは腕に力を入れた。きつく、抱きしめる。濡れたシャツが張り付いて、とっくに冷えている身体。暫くすると、触れ合っている部分だけでは在るが、体温を取り戻した。 温もりを感じたのか、それとも単に諦めただけなのか。重ねられた不二の手からは、力が抜けていた。その代わり、手を包み込むようにして、指を絡めてくる。 「そういう意味で、オレは言ったんじゃない」 「………何?」 強くなる、雨音。よく聴こえるように。オレは不二の耳に唇を寄せた。 「オレは、お前にメンバーでいて欲しいから言ったんだ。オレと一緒に。全国制覇を目指してはくれないか?」 オレの言葉に反応してなのか、不二の手から、僅かだが力が抜ける。何かしらの答えが返ってくると思ったが、それ以外、何もなくて。 「……不二?」 沈黙のままでいる不二の顔を覗き込もうと、少し、腕を緩めた。けれど。今度は逆に、不二がオレの腕を掴み、身体を離そうとはしなかった。不二の肩が、微かに震えていることに気づく。 「ありがとう」 今にも消えそうな声で呟いた不二の頬には、雨とは違う、温かいものが伝っていた。 |
例のWJ『Genius218 きっかけ』の回想の続きです。 北村サンの日記絵(回想の続き)からピンと来て描きました。だから、本当はこの物語は続きの続きなんだよね(笑) ということで。北村サンに再びそのイラストを書いていただき、ちょっとコラボしてみました。 北村サンっ、ありがとうございます!好きです。(告白) 北村杳サマの素敵不二塚サイト【infection】 |
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