世界の果て
 ――そうやって君は、何処へ行こうというの?


「僕はこれ以上、何処にも行けないのに」
 まだ荒い息のオレを優しく抱き締めると、不二は呟いた。汗で張り付いたオレの髪を掻き揚げ、露になった額に唇を落とす。
「何の話だ?」
 不二の顔を押しのけ、見つめる。不二は小さく溜息を吐くと、歪んだ笑みをオレに向けた。
「不二?」
「君は振り返ること無く、立ち止まること無く。何処までも真っ直ぐに突き進む。僕すらも、通り越して」
 何処へ行こうとしているんだろうね。呟いてオレの頬を包むと、不二は深く口付けてきた。冷め始めていた身体が、再び熱を持ち始める。
 オレは不二の背に腕を回すと、今度は自分から唇を重ねた。その事に。不二は少し驚いたようだったが、口元を歪めて微笑うとオレの要求に応えるように指先を動かし始めた。
「っ」
 襲ってくる感覚に、もう隠すことをしなくなった声が漏れる。
「ねぇ、手塚。以前に君は僕を置いて行かないって言ったけど。やっぱり君は僕を置いて行くよ」
 唇を離すと、不二は歪んだ笑みを浮かべたままで呟いた。
「…な、に?」
「僕の世界は、手塚国光という果てを見つけてしまったから。そして、僕は今、そこに立ってる」
 だから、これ以上僕は何処にも行けない。
 笑みが消え、苦しそうなそれに変わる。何か言おうとしたけれど、それでもまだ止めない指の動きに、オレの口からは言葉にならない声しか出てこなかった。
「なのに、君は今だ走ることをやめない。君の世界の行き着く先は僕じゃないんだ。ねぇ、僕すらも追い越して。そうやって君は、何処へ行こうというの?」
「……ふっじ…」
 止みそうにない手の動き。オレはその手を取り身体から離すと、その代わりに不二を強く抱き締めた。不二の全体重が、オレの身体に圧し掛かる。
 オレは髪を梳くようにして不二の頭を抱き寄せると、その耳元に唇を寄せた。
「不二の言う通り、オレの世界の果ては、不二周助ではないのだろう。だが」
 オレと一緒に居る限り、お前の世界はオレと一緒に広がり続ける。
 囁いて、不二から手を離す。身体を起こし手俺の顔を覗き込んだ不二は、少し驚いたような表情をしていた。
「……手塚?」
「お前が、こうしてしっかりとオレの手を繋いでいることが出来るならの話だが」
 不二の右手を取りと、自分の左手を合わせた。微笑うオレに、不二も笑顔で返す。
「うん」
 いつもの笑顔で頷くと、不二は指を絡め、しっかりとオレの手を握り締めた。




365題のコメントから。まぁ、お題用の話なので、短くて勘弁。
とりあえず、不二クンの世界の果ては手塚です。
ちなみに、世界の中心も手塚です。(純愛モノって読むからいいと思いません?画で観ると恥ずかしい←何の話だι)
しかし、手塚の世界の中心は不二でも、世界の果ては不二ではないです。ないと思います。ない分、不二のことで沢山悩むと思います。


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