背 「手塚。好きだよ」
「……知っている」
 照れたように答える彼に、僕は微笑うと額に張り付いている髪を掻き揚げて唇を落とした。そのまま体重を掛けるようにして、汗で少し湿っている彼の身体を抱き締める。
 12センチの身長差。それを埋めることは未だに出来ないけど。だけど、こうしていれば、その差を殆んど感じずにいれる。
 ああ、だからなのかもしれないな。手塚とこうしている時間が好きなのは。
「…不二」
「ん?」
「重いのだが」
「ああ、ごめん」
 赤いままの顔で言う彼に、僕は苦笑すると身体を離した。隣に仰向けに寝転ぶ。
「早く身長伸びないかなぁ」
 彼の肘を持ち、真っ直ぐに上げさせる。その掌に自分のそれを重ねるようにして、僕も手を上げた。けれど、指先が辛うじて掌に触れるくらいで、指絡めることが出来ない。
「時期に伸びる」
 僕のしようとしてることに気づいたのか、彼は呟くと肘を曲げて指を絡めてきた。そのまま腕を下ろし、見つめ合う。
「本当に伸びるかな?」
「成長期が来ていないだけだろう?」
「でも、君を越すことが出来なかったら、意味ないんだよ」
 大袈裟に溜息を吐いてみせる。そのことに、今度は彼が溜息を吐いた。
「そんなに身長を伸ばしたいなら、乾に頼んで特別メニューを作ってもらえば良いだろう」
「越前くんみたいな?」
「そうだ」
 真面目な顔をして頷く。彼にしてはいいアイディアだと思うけど、牛乳を飲むくらいなら、僕だって試したことがある。裕太に追いつかれたときに。それに。
「最近知ったんだけどさ、カルシウムを摂っても身長は伸びないんだよ。ただ骨が太くなるだけ」
「………そうなのか?」
「そうらしいよ。現に僕も散々カルシウムを摂ってこの身長だし」
 驚いたような顔の彼に、僕は苦笑しながら言った。そのことで、僕が乾が作るような食事メニューを試したことがると判った彼は、ただ、そうか、とだけ呟いた。
 小学校のときに大量にカルシウムを摂っていた僕は、きっと骨密度がもの凄く高くなっているだろう。もしかしたら、石田クンの波動球を受けても大丈夫だったかもしれないな。
「……不二」
 ぼんやり考えていると、突然彼が僕の名前を呼んだ。慌ててピントを彼に合わせる。
「なぁに?」
「だが、寝る子は育つというのは強ち間違いではないのだろう?睡眠時に成長ホルモンが分泌されるというし」
 何を言い出すのかと思えば。彼も彼なりに僕の身長を伸ばす方法を考えていてくれたようだった。嬉しくて、思わず顔が綻ぶ。
「そうだね。多分、その認識は間違ってないと思うよ」
「ならば…」
「ん?」
 言いかけて深呼吸をすると、彼は真っ直ぐ僕を見て言った。
「ならば、さっさと寝ろ。もう夜中の2時だぞ」




オマケ↓
「えー。やだよ。もう1回くらい付き合ってよ」
「五月蝿い。身長を伸ばしたいのだろう?」
「だったら身長なんて伸びなくていいからさ。ね、いいでしょ?」
「………勝手にしろ、馬鹿」
「うん」

そんなオマケいらないって?
それよりも。何度目だ、不二周助!?
365題でコメントをくれた方へ。
ってか、入り口はシリアスチック(だったか?)なのに、最後は結局バカップルって言う…。


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