スカイ・ブルー


「てーづーかっ」
「……っ!?」
「あはははは。」
 突然、背後から覆い被さってきた男は、驚いてしまったオレを見て楽しそうに微笑った。身体を離し、オレの前の席に腰を下ろす。
「そんなに驚かないでよ、可愛いなぁ」
 ギリギリまで顔を近づけ、また、微笑った。
「可愛いって、不二、お前…」
 言いかけて、オレは周りを見た。昼休みなので、大して教室に人は残っていないものの、教室や廊下からの視線はオレたちに集中していた。当たり前か。不二は何処へ行っても目立つ。
「お前…見られてるぞ?」
 顔を遠ざけるように額を押しながら、オレは出来るだけ小声で話した。
「うん。知ってる。手塚は何かと目立つからね」
「……それはお前だろ?」
「ま。お互い様ってトコだね」
 本当に、楽しそうに微笑う。その顔に、オレは周囲の視線など忘れて、一瞬だけ、見惚れてしまった。顔が紅くなっていくのが解かる。
 ああ。また、調子が狂っている。
 オレは溜息を吐くと、咳払いをひとつした。
「なんか、用か?」
「うん。君が珍しくお弁当持ってるみたいだからさ。お昼、屋上で一緒に食べようかなって思ってさ。」
 そう言うと、不二は自分の弁当をオレの机に置いた。確かに、不二の言う通り、オレは今日、珍しく弁当を持って来ていた。普段は食堂で昼食をとっているのだが。いや、それはともかく、何で不二がオレが弁当を持ってきてることを知っているんだ?
「何となく。そんな気がして、ネ」
 不思議そうに見つめるオレを見て、不二はクスクスと微笑った。
「んじゃ、行こっか」
 言うと、不二は席を立った。
「…行くって、何処にだ?」
「さっき言ったじゃないか。屋上だよ」
「……屋上?」
「そ、屋上。さ、行こう行こう!」
 有無を言わさぬ強引さで腕を捕ると、そのままオレを引き摺るようにして歩き出した。
「ちょっ、待て…」
「大丈夫。君のお弁当は持ってるよ」
 言って弁当を揚げて見せると、クスクスと微笑った。
 そういう問題じゃないのだが…。しょうがない、か。
 オレは溜息を吐くと自分の意思で不二についていった。

「…お前はいつもあんなことをしているのか?」
 昼食を取ったあと、オレの膝を枕にして空を見上げている不二に訊いた。
「ん?屋上って、良いよね。風が気持ちいいし、空も近いし。ほら、手を伸ばせは届きそうだと思わない?あの雲にだって…」
 言って、手を伸ばすと、何度か掴むような仕草をする。
 変なところで子供っぽかったりするんだな、とオレは苦笑した。
 ……って。
「話をはぐらかすな」
「……何の事?」
「だから、お前、いつもああやって鍵を開けているのか?」
「うん。だってそうしないと、ココに入れないもん」
 平然と答えると、不二は悪戯っぽく微笑った。
 ああやって…針金を使って、不二は屋上の鍵を開けていた。それも、かなり慣れた手つきで。一体、何処でどうやったらあんな技術が身に付くのか。つくづく解からない男だと思う。
「まあ、合鍵を作るっていう事も出来なくはないんだけどね。お金かけたくないし。…それに、ああやって開ける方が、何となく、スリル感じない?」
「……さあな」
 楽しそうに言う不二に、オレは呆れて見せた。その態度にか、不二はクスクスと笑い声を上げた。
「なんだ?」
「いや…。そういえば『手塚国光、初めての校則違反』だなって」
「………お、屋上に入るのは、校則では禁止されて無いだろう?」
「じゃあ、何で入るとき躊躇ったの?」
「それはっ……」
「……それは?」
 言えない。不二と二人きりになるということに躊躇ったなんて。別に、不二と居るのが嫌なわけじゃない。ただ、二人きりになると時々どうしていいのか解からなくなる。
「あ。もしかして…」
 言いかけて、不二は起き上がった。オレの肩を掴むと、そのままフェンスへ押し付ける。
「僕に襲われるとでも思ったんじゃないの?」
 不二の言葉に、オレの身体は強張った。唇が触れるか触れないかの距離まで迫られる。オレは怖くなって、硬く目を瞑った。と、吹き出すような不二の声と共に、肩に感じていた温もりが消えた。
「あはははは。そんなに怖がらなくてもいいのに。冗談だよ、冗談」
 笑いながら、不二は立ち上がると身体に付いた砂埃を掃った。
「…じょう、だん?」
 なんだか、少し拍子抜けな感じがした。だからと言って、特に何かを期待していたわけではないのだが。
「そ。冗談。手すら握らせてくれないのに、僕が君に何かするわけないでしょ」
 不二のその言葉に、少しだけ胸が痛む。
 そうだ。オレと不二はいわゆる恋人同士の関係。なのに、手すら握っていない。普段の生活も、一緒に帰ることが多くなったくらいで、何ら変わりがない。理由は、オレが拒んでいるから。
 嫌なわけでは決してないのだが、ただどうしても、恥ずかしさが出てしまう。
 不二はそれに対してはいつも何も言わなかった。だから、全然気にしていないものだと思っていたのだが…。
「さ、そろそろ戻ろうか。予鈴、鳴っちゃうよ?」
 予鈴までには着席したいんでしょ?と言うと、不二はオレの分の荷物まで持ち、ドアの方へと歩いていった。その時、一瞬だけ見えたのは、不二の哀しそうに微笑う顔。
 …………。
 …………。
 ……しかたがない、な。
 オレは不二に気づかれないように、小さく溜息を吐いた。
「不二!」
「……何?」
「お前がオレの膝で寝ていた所為で、足が痺れた」
「………。」
「手を、貸せ」
「……うん。」





友達がね。ピュアい感じの不二塚ってないよねって。
だから、書いてみたんですけどね。
ピュアくないですか?駄目ですか?
GARNET CROWってしてますか?(笑)
曲のイメージ的にネ。GARNET CROWの【スカイ・ブルー】がいいかなって。
中身は伴ってませんけどね。曲調で。
ちなみに、手塚の膝枕は不二様のお気に入りです。
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送