phases |
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「変わるものは嫌いだ」 不二に抱かれていたら、そんな言葉が口を突いて出た。 「何?」 「お前は変わらない。だから、好きだ」 手を伸ばし、不二の頬に触れる。オレが何をしようとしているのか分かったのだろう。不二は体の動きを緩めると、顔を近づけてきた。そのまま、深い口づけを交わす。 「僕は、変わってない?」 「お前は変わっていない。九州に旅立つ(あの)時のままだ」 多少、筋肉質にはなってはいるがな。オレの言葉に不満そうな顔をしていたのでそう付け加えた。吹き出したように微笑ってくれたが、それでも不二はどこか不満そうだった。だが、それが何故かを訊く前に不二の動きは激しくなり、オレは思考を奪われていた。 「変わらないものは好き?変わるものは嫌い?」 甘い気だるさの中を漂っているオレに呟くと、頭の下にある腕を折り、横から抱き締めてきた。突然過ぎたから、少し反応が遅れる。 「……変わって行くものを、どうして好きでいられる?」 不二の言葉は、先ほど中断された会話の続きだった。 「君の好みも、一緒に変わればいいじゃない」 「簡単に言うな。人はそう、変われるものではない」 「君がそう思ってるだけだよ」 耳元に唇を寄せ、クスリと微笑う。その吐息がくすぐったくて身を竦めると、今度はオレの上に圧し掛かってきた。真っ直ぐにオレを見つめ、キスを交わす。 「僕は、変わらないものが、嫌いだな」 「不二?」 「変わって行くものに興味を抱くし、好きになる。変わらないものなんて、飽きるだけだよ」 額を重ねそれだけを言うと、不二はオレの隣に戻った。続きをするのだろうと思っていたオレは、そのことに、酷く動揺した。不二の言葉が、時間差で響いてくる。 オレは、変わっているつもりはない。だとしたら、不二はオレに飽きているのかもしれない。 「何、変な顔してるのさ」 天井を見上げたままのオレを、また横から抱き締めると、不二は頬に唇を落とした。強く、抱き締められる。不二を見たかったが。それは、出来なかった。不安が、徐々に広がっていて。唐突に、その温もりが嘘に思えてきてしまったからだ。 不二の眼を、見るのが怖い。 「ねぇ、手塚。知ってる?この世の真理」 オレを抱き締めたまま、耳元で囁くようにして言う。凄く近くで聞こえているはずなのに、その声はとても遠く感じた。不二が遠いのではない。オレが、意識だけ遠くへと飛ばされてしまったようだ。 「不二は、オレを――」 「変わらないものなんて、この世には何ひとつ無いんだよ」 「……え?」 「何ひとつ、無い。僕の、君への想いだって。刻一刻と変化してるんだ」 好きだよ。囁く不二の声が、今度はオレの体の中で響いた。顔を動かし不二を見ると、深く唇を重ねられた。 「君だって、僕だって。常に変化し続けてる。もし手塚が、僕を変わらないと、だから好きだと思うなら。きっと僕たちは同じ方向に変化してるんだよ」 だから、好きだよ。変わって行く手塚が。額を合わせ、不二が微笑う。 「刻一刻と君が変わって、それと歩調を合わせるみたいに僕は君を好きになって行くんだ。これって、君への想いが変化してるってこと」 「……不二」 「それでも君は、変わるものを、僕を嫌い?」 言うと、不二は苦笑した。嫌いではない。そう言うかわりに首を横に振ると、額が擦れる音がした。 「そう。良かった」 大袈裟なくらいの安堵の溜息を吐いて言うと、不二は微笑った。手塚、変わったね。呟いて、また、微笑から。 「そう言うオレが、好きなのだろう?」 微笑いながら言うと、今度はオレから唇を重ねた。 |
手塚お帰り!第二弾、みたいな。 『静寂の間に』の夜とか思っていただければいいのかなぁ。 変わらないものは、飽きますよ。飽きるというか、慣れるのかもしれないね。どちらにしても、駄目だよ。それは。 でもね。変わらないものは無いから。安心。同じだと思ってても、ちゃんと見れば違うものだよ。 不二は飽きっぽい性格ならいいな。興味を持てるか持てないかで行動すればいいな。 タイトルは辞書で満ち欠けって調べたら出たんだけど…。合ってるかどうかは知りませんよってに(←英語はからきし駄目) |
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