平和なことか |
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「風強すぎっ」 襲いかかってくる自分の髪を抑えながら、不二はオレに向かって怒鳴りつけた。まるで、オレが風を起こしているかのように。 「ねぇ。どーしてくれるのさ」 かのように、ではないらしい。 「仕方ないだろう。オレに風はどうにもならん」 「でもさぁ。手塚が僕を誘うときって、ほっとんど穏やかな天気じゃないよね」 「……だったら」 「でも、断ったりはしないよ。だって、君が僕を誘ってくれることなんて殆んどないからね。あ。だから天気が荒れるのか」 さっきまでの膨れっ面は何処に行ったのか、不二はオレの腕をぎゅっと掴むと、体重を預けながら笑った。もう慣れているから足元はふらつかないが、こうされると歩きづらいことにかわりはない。しかし、だからと言って、離れようという気など起こりはしないのだが。 「ね。こんなことにならないようにさ、これからはちょくちょく僕を誘ってよ」 「…そんなことしたら、有り難味がなくなるだろう」 「………じゃあ、この風止めて」 オレを見上げて言うと、不二はわざとらしく頬を膨らせた。明らかにオレで遊んでいるその顔に、溜息を吐く。 「だったら、これでも被ってろ」 不二の頬の膨らみを手で潰すと、その後ろにあるフードをボサボサの頭に被せた。視線を戻すと、不二は妙な顔でオレを見つめていた。 「何だ?不満か?」 「………ねぇ、手塚。愛してるって言って」 「なっ…」 「いいじゃない。言ってよ」 掴んだオレの腕を揺すると、不二はいつものようにせがんだ。いつものように、とは言え、それはいつも予期していなかったタイミングで訊かれるから、オレはいつもすぐに返せずに詰まってしまう。それに、準備出来ていたとしても、さらりと言えるような台詞ではない。 「ね?」 だが、せがむ不二をこのまま放って置くと拗ねてしまうので、オレは咳払いをすると、息を吸い込んだ。 「……あ、いしてる」 これでいいか、と不二の顔を覗き込む。本当は直ぐにでも顔を背けたかったのだが、それをするとやはり不二は拗ねるので、出来なかった。が。 「駄目。全然駄目。気持ちが足りないよ」 拗ねはしなかったものの、再び不二はオレに怒鳴った。フードで蔭になっている所為もあって、オレを見上げる眼が鋭く見える。 「気持ちが足りないと言われても。仕方が無いだろう、突然せがまれたのでは」 自分から言いたいと思って言うのならまだしも。そう続けようとしたが、自分から言いたくなることなんてあるの?と言われそうなので、呑み込んだ。はぁ、と溜息を吐く。 何故かいつも、不二に振り回されてばかりだ。それが悪いとか不満だとか言うわけではないが、偶には反撃だってしてみたい。 ああ、そうか。 「不二」 「ん?」 「『愛してるって言って』」 不二の口調を真似して、オレは訊き返した。手本を見せてみろ。そんな気持ちを込めて、薄く笑ってもみる。 暫く、予期していなかったと言った風な顔でオレを見つめていた不二だったが。フードをとり手櫛で乱れた髪を直すと、オレの前に立った。 「愛してる」 微笑って言う不二に、情けないが、オレは思い切り照れた。自分でせがんだことなのに、反撃は見事に失敗に終わってしまった。 「……あれ?手塚、どうしたの?」 クスクスと微笑いながら、俯いたオレの顔を覗き込んでくる。それでもなお不二の視線から逃れようとしてしまったから。不二はオレの頬を両手で挟むと、背伸びをして唇を重ねた。 「ね。気持ち、伝わった?」 フードを被り、隣に戻る。不二がするよりも先に腕をとり絡めると、オレは、恐れ入ったな、と呟いた。それが聞こえたのだろう。不二はピッタリとオレに寄り添うと、見上げ、ニッ、と微笑った。 「じゃあ。手塚も練習しようか。ねぇ。愛してるって言って?」 「いや、それは――」 |
映画のネタバレをしてくださった優しき方に。 どうです?バカップル。 SURFACEの『平和なことか』を基に。聴いて欲しいけど、皆、知らないよね(涙)。『フレーム』のC/Wです。 ♪「あいしてるって言って」君は唐突に言う いきなり言う 皆目見当つかぬような タイミングで僕にせがむ 愛してるって言った 僕に君は怒るまたも怒る 気持ちがちと足りないらしい ああっ 僕等ってなんて平和なことか!(笑)♪ |
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