Sleepless
「手塚。何が欲しい?」
 まるで独り言のように、不二が呟いた。
 突然のことに意味が分からず。その先の言葉を待っていると、不二は悪戯っぽい笑みを見せ、オレの両手をギュッと包み込むようにして握った。
「来週の今日、手塚の誕生日でしょ?だから」
 どこか期待に満ちた目で見つめる不二に。オレは頭が呆っとしてしまい、何も答えることが出来なかった。
「今すぐに、とは言わないから。来週の誕生日までに、何か考えておいてよ。僕から、何が欲しいのか」
 そのまま黙っているオレに不二はクスクスと楽しそうに微笑いながら言うと、一度だけ強く手を握り、そしてコートの向こうへと行ってしまった。

 それから、六日。夜が明ければ、オレの15回目の誕生日。
 だが、オレは未だに、不二に何が欲しいかを伝えることが出来ないでいた。
 そもそも、何故不二がオレの誕生日に何かをしようと思うのかが、分からない。
 その理由を聞くと、去年の自分の誕生日にプレゼントをくれたからそのお返しだと言っていたが。それは、その前に、オレが不二から誕生日にプレゼントを貰ったからで。そのお返しをしたまでだ。
 だが不二は、自分がプレゼントを渡したのはオレにお返しをして欲しくてのとこではないから、去年の誕生日のお返しをするのは当然だ、とわけの分からない理由を言っては、微笑うだけだった。
「…オレが、欲しい、もの」
 呟いては、浮かんできた答えに、顔が赤くなる。
 不二に欲しいものを伝えることが出来ないのは、不二の行動の理由が分からないからでも、欲しいものが思い浮かばないからでもない。
 欲しいものは、ある。それも、不二から。
 だが、それを言ったとして。不二からそれが貰えるとは到底思えない。それに下手をしたら。いや、下手をしなくても、確実に…。
「嫌われるだろうな」
 溜息と共に、顔から一気に熱が引いて行くのが分かる。
 まさか、どうして、不二が欲しいなどと言えるだろう。
 菊丸や乾のような性格であれば、駄目だった時に上手く冗談などにして誤魔化すことも可能だろうが。
 そんな芸当、オレには、無理だ。それに、不二はいつだってオレのことを見抜いてしまう。
 だからと言って、他にこれといって欲しいものも見当たらない。きっと探せばあるのだろうが、不二周助、という答えが、他のものを考えさせなくしていて。
 一体、どうすれば…。 
 どうにもならず寝返りをうつと、目の端で何かが光った。どうやら、メールが来ていたらしい。
 手探りで眼鏡をとり、携帯電話を開く。そして、そこに出てきた名前に、オレは一瞬目が眩んだ。
「……不二」
 催促だろうか?オレが何も言わないから、忘れているとでも?
 いや、それは無いだろう。あれ以来、どうしても目で不二を追ってしまっているオレの視線を掴まえては、意味深に微笑っていたのだから。
 じゃあ、何だ?
 恐る恐る、メールを開く。と、そこに書いてある文字に、オレは余計に混乱してしまった。
『随分と悩んでるみたいだけど。多少の無茶ならきいてあげるよ。それが、僕からしか貰えないものだっていうのならね』
「不二からしか、もらえないもの、だと?」
 そう言えば、そんなようなことを六日前にも不二は言っていたような気がする。僕から、何が欲しいのか、と。
「……これは」
 どういう意味だ?
 訊き返そうとしたが、溜息と共に書きかけたメールを消去した。
 携帯電話を閉じ、再び暗闇を取り戻した天井を見つめる。
 不二からしか、貰えないもの。幾ら考えても、オレにはその答え一つしか思い浮かばない。
「信じても、いいんだな?」
 適当な答えを出しても、きっと不二には見抜かれてしまうだろうし。
 どちらにしても、何も他に思いつかない限り、明日はオレの気持ちを告げるしかない。
 いや、もしかしたら。もう既に、不二は見抜いているのかも知れない。オレの気持ちを。だからこそ、あんなことを…。
「不二」
 どうやら、今夜は眠れそうにない。
 そして、欲しいものが不二から手に入るのなら、明日も…。




別に要らない。って答えもあるのにね、手塚くん。
冷静じゃないです。彼。ええ。全然、全然。だって、ムッツリだし(笑)
不二が欲しいって、勿論、不二に抱かれたいって方でね。
手塚はきっとね、自分が受けになることしか考えてないよ(笑)
遅れましたが、誕生日おめでとう。


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