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教室に入ると、不二は頬杖をついて、ライトに照らされたグラウンドを眺めていた。近づくに連れ、その表情が見えてくる。 口元に浮かんだ笑み。一体コイツには何が視えているというのだろうか。知りたくて、同じように窓に目をやると、ガラス越しに不二と目が合った。 「次期生徒会長は、僕たちが受験生だっていうことをすっかり忘れてるみたいだね。そろそろ、完全下校の時間だよ」 不二の視線が外れる。オレもそれにならい不二の手元を見ると、そこには読みかけの文庫が置かれていた。 「お前も忘れてるだろう」 「僕はいいの」 よくないだろう。そうは思ったが、のんびりとした口調にどうしても反論できない。吸い込んだ息が溜息になる。 「ねぇ、手塚」 呼びかけた不二の顔が真面目になる。なんだ、と聞き返そうとした口を塞がれる。急に立ち上がったせいで倒れた椅子の音が、妙に教室に響いた。 「お前はっ」 「手塚って、油断だらけだよね」 「こんなこと、されるなんて。普通、思わないだろう」 「でも僕はしてる。それも、割と頻繁に」 学習能しないね。されても困るけど。椅子を直し、文庫を鞄にしまう。そうして再びオレを見た不二は、外を眺めていた時と同じように微笑んだ。 |
1000題『うつけ者』用に書いたのですが。既に他のCPでの物語が出来上がっていたので(笑) |
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