「どうしたの？大和くん。呆っとしちゃって。みんな帰っちゃったよ？」
「ああ。スミマセン。ちょっと考えごとをしていたもので」
「手塚くんを大会に出場させるかどうかってこと？実力はS１を務めれられるものはあるけど。僕は止めた方がいいと思うな」
「どうしてです？」
「だって、彼、人付き合い苦手なんだもん。これがもし僕みたいに誰からも愛される可愛い後輩なら…」
「自分で言いますかね、そういうこと」
「まぁ、とりあえず。最後まで聞いてよ。…えっと。で。そういう僕みたいな後輩なら、大会に出たとしても、先輩達に嫉妬されることはないだろうけど。彼は、彼の強さは認めても、いや、認めてるからこそなのかも知れないけど。きっと、先輩達に虐められるよ」
「ああ、成る程ねぇ。確かに。彼は同い年の子たちからは信頼されているようですけど、２年、３年達には快く思われていないですね」
「でしょう？だから、止めて置いた方がいいと思うんだ」
「そうですね。参考にします。……って。ボクが考えていたのは、実はそのことじゃないんですけどね」
「え？違うの？」
「違いますよ。何でそう思ったんです？」
「だってほら。大和くんってば、ここのところ口を開けば、手塚くん、手塚くん、って行ってたじゃない」
「そう、でしたっけ？」
「そうだよ。まぁ、彼に魅力があるのは、僕も認めるけど」
「……もしかして、妬いてるんですか？」
「そう見える？」
「…………といったら」
「え？」
「ボクが、不二クンを好きだと言ったら。やっぱり変態になってしまうんでしょうか？」
「うーん。なるんじゃない？っていうか、知らなかった。大和くん、ショタコンだったんだ。僕、可愛いもんね」
「ショ…随分と難しい言葉知ってるんですね」
「だてに年の離れた姉を持ってないからね」
「成る程。……けど、不二クンだったら充分に女の子に見えると思いますよ」
「じゃあ、ショタコンでロリコン？大和くん、二重苦だ」
「……本当は、そこにもう一つ加わるんですけどねぇ」
「ん？」
「分からないなら、いいですよ」
「好きになるのに性別は関係ないと思うけどな」
「………年齢は関係あっても？」
「あれは周りから見たらどう映るかって言う話だよ。多分」
「多分、ですか」
「うん」
「……で」
「うん？」
「不二クンは、ボクの告白を受けてくれますか？」
「え？さっきの告白だったの？」
「の、つもりだったんですけどねぇ。さり気なさ過ぎましたか」
「例え話だと思ってたよ」
「…例え話で、こういう話をボクがすると思います？」
「してもいいんじゃない？」
「…………」
「でも残念。僕には今、好きなヒトがいるんだ」
「そうですか…」
「気になる？」
「……ボクが敵いそうな相手ですか？」
「ううん。敵わない」
「そう、ですか」
「でも、僕も叶わないから」
「はい？」
「僕のこの想いは、絶対に叶わないから」
「……もしかして、ブラウン管の中のヒトですか？」
「ううん。うちはプラズマテレビだよ」
「そうじゃなくて、ですね…」
「あのね、手塚くんなんだ」
「え？」
「さっき話題に出してた、手塚国光くん。魅力があるのは認めるって言ったでしょう。…好きなんだ」
「へ、へぇ」
「でも、手塚くんはああいう性格だから。きっと、男の僕のことなんか好きにならない。でもいいんだ。今は。一緒にいられるだけで。…だから、大和くんがちょっと羨ましいかな」
「何でです？」
「手塚くんが唯一慕ってるのが、大和くんだからさ。僕には、未だにココロを開いてくれないんだ。一所懸命話し掛けて、お弁当だって一緒に食べてるのに」
「……それはそれは。なかなかの努力家ですね、不二クンは」
「まぁね」
「けど、いいんですか？こんな所にいて。手塚くん、もう帰っちゃいましたよ？」
「うん。でも。何か、ここの所大和くんの様子が変だったから。気になって」
「そうですか。それは悪いことをしましたね」
「……本当にそう思ってる？」
「何がです？」
「だって、僕が手塚くんと一緒に帰るってことは、大和くんとは一緒に帰れないってことだよ？」
「そうとも言えませんよ。三人で帰ればいいじゃないですか」
「えーっ」
「不満なんですか？」
「だって、大和くんと手塚くんが仲良くしてるのみたら。僕だって、少しくらいは焼いちゃうよ」
「…………」
「何、その変な顔」
「ボクは元々こんな顔ですよ。…じゃあ、不二クンはどうしたいんです？」
「え？」
「だから、ボクと一緒に帰りたいんでスか？それとも、手塚くんと？」
「うーん…。でも、大和くんと一緒に帰れるのはあと２ヶ月くらいしかないから。今は、大和くんと一緒に帰りたいかな。僕だって、手塚くんに対してほどじゃないけど、大和くんのこと好きだし」
「とかなんとかいって、本当は、自転車の荷台(ボクの後ろ)に乗ることが目的なんじゃないんですか？」
「好きなヒトのこと、疑うの？」
「……騙されておきますよ。愛故にってことで」
「…………」